高崎山の猿に学びたい人間の子育ての精神

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崎山で30年間ガイドをしてこられた
松井猛さんという方がいます。

松井さんは一般企業を辞めて高崎山に勤務してから、
サルに深い関心をよせ、30年間にわたって細かく観察し、
これまで2500匹のサルの顔を覚えてきました。

親子、兄弟、いとこなどの関係を示す
家系図も仕上げるほどの愛猿家(?)です。

松井さんの3冊目の著書、
『サルの子どもは立派に育つ』(西日本新聞社刊)は、
主に「サルの子育て」について書かれたものですが、
これが実におもしろく示唆に富んでいます。

台風の時、母ザルはずぶ濡れになりながら
子ザルが濡れないようにしっかりお腹に抱いています。

極寒の日には、サルの家族はしっかりと抱き合って暖をとります。

死んだ子ザルの亡骸を
いつまでも離そうとしない母ザルもいました。

子供に対する愛情は人間にも負けないくらい強いのです。

しかし、そんな愛情深い親ザルも、
子育てには非情なほどの厳しい態度をとります。

母ザルは、赤ん坊が母乳だけで育つ期間は、
お乳を欲しがるといつでも飲ませますが、生後3ヵ月もすると、
お乳を飲もうとする子ザルを時々突き放します。

赤ん坊は体を振って大声で泣き叫びます。

生後6ヵ月を過ぎると授乳拒否をもっと厳しくします。

こうして母ザルが主導権を持ってしつけをする態勢ができます。

さらに生後10ヵ月になると、お乳を求めてすり寄ってきても、
わざと知らん顔をします。

その結果、赤ん坊は母ザルから少しずつ離れて
友達と遊ぶ時間が増え、自立の訓練を受けていくのです。

「子供の言いなりにはならない。
 しつけのイニシアチブは親が取る」ということなのでしょう。

高崎山の寄せ場では、係員さんが決まった時刻に
まず小麦をサーッとまきます。

するとサルは駆け寄ってきて拾って食べます。

赤ん坊も、生後2ヵ月頃から小麦に興味を持ち、
お母さんに倣って自分で一粒ずつ拾って食べることを覚えます。

そのあと、彼らの大好きなサツマイモタイムがありますが、
この時は大変です。

大人のサルだって、芋にありつくのは容易ではありませんから、
子ザルたちには高嶺の花で、芋のカケラか皮にありつけたら
”ラッキー!”です。

ある日、女性のお客さんが1匹の母ザルに
「お母さん頑張って!」と声援を送っていたそうです。

その母ザルは素早く動いて見事に芋を獲得。

1個を口にくわえ、3個を両手に持って戻ってきました。

「さすがお母さん、たくましい!」とその女性は拍手。

きっと子ザルに分けてやるんだろうと思っていました。

ところが母ザルの行動は、女性の予想を裏切るものでした>>>

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ザルは、芋を求めて寄ってきた子ザルをバシッと払いのけ、
自分で全部食べてしまったのです。

見ていた女性は唖然としました。

またある時、1匹の子ザルが幸運にも大きな芋を手に入れました。

彼は嬉しそうに母ザルのところに走っていきました。

すると、あろうことか、突然、母ザルはその芋を取り上げて
自分でポリポリと食べてしまいました。

見ていた人たちは、「なんてひどい母親!」と驚き、
中には「鬼!」と叫ぶ人もいたそうです。

松井さんによれば、実は、これは母親の厳しい訓練だというのです。

実際、子ザルが芋を手に入れた場合、母ザルが取り上げなくても、
すぐに他の大人ザルから取られてしまいます。

これに懲りて、やがて子ザルも芋を手に入れたら脱兎の如く駆け抜けて、
自分しか入れない小さな隙間に入って食べたりして、
要領を覚えていきます。

また、自然の山の中でも、母ザルは赤ん坊にお乳は与えても、
他の餌を与えることは絶対にしないそうです。

子ザルを木の実や昆虫などの餌のある場所に連れて行っても、
母ザルは自分が餌をとって食べるだけで知らん顔です。

決して餌を取って与えたりはせず、
子ザルが自分で探して食べるようにじっと見守るだけです。

過酷な大自然と仲間との競争の中で、
たくましく生きていけるように心を鬼にして訓練しているのです。

それが母親としての真の愛情なのだというのです。

今、日本の子育て環境ではこんな傾向があります。

子供の欲しがるものを何でも与えてしまう親。
それが愛情だと思って細かいことまで面倒を見すぎる親。

それが結局、”いつまでも抜けきらない依存心”や、
”自分のことは自分でするという自立能力の欠如”
を招いている一面があります。

松井さんは、自然から正しい教育のあり方を学ぶべきだと言います。

「余計なものは与えない」「必要以上に手を貸さない」という教訓です。

「与えるのが愛情」ではありますが、
「与えすぎない愛情」も必要なのです。

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