小さな運転士 最後の夢

017
ノ電の運転士になりたいという
 病気の子どもの夢を叶えてもらえないでしょうか?」

ある日、こんな手紙が江ノ電の会社に届きました。

難病と戦う子どもたちの夢を叶えることを
支援しているボランティア団体
「メイク・ア・ウィッシュ」からの手紙でした。

「メイク・ア・ウィッシュ」では、
憧れの野球選手やサッカー選手に会いたいという夢や、
コンサート・ホールで憧れのピアノを弾きたいという夢など、
一見、叶いそうにない夢を、難病の子どもたちに実現させています。

江ノ電の会社に届いた手紙の子どもとは、
「拡張型心筋症」という先天性の難病で入院していた
16歳の少年、新田明宏君でした。

「江ノ電を運転したい」
と新田君が強く思うに至ったのには、理由があります。

幼い頃から病気のために、
運動が思いきってできない新田君を
癒してくれたのが電車でした。

お母さんが「外で遊べない息子のために」
と思って買ってくれた電車のおもちゃが大好きでした。

お父さんもそんな新田君を、
休日のたびに電車に乗せてあげました。

電車の中でも、ゆっくり街中を走る江ノ電が、
特に新田君のお気に入りでした。

中学生の頃になると、
新田君の電車への思いは、ますます強くなります。

ところが、彼が15歳の時に、病状が悪化します。

入院した彼は、大好きな江ノ電にも乗れなくなってしまいました。

それどころか、彼の病状は、
もはや治療する方法がないという状態に陥りました。

病院の先生は、ベッドの上でも時刻表を離さない新田君を見て、
こう思いました。

「こんなに鉄道が好きで、運転士になりたいと
 心から思っている彼の夢を何とか叶えてあげたい」

「メイク・ア・ウィッシュ」のことを知った先生は、
その事務所に連絡をいれました。

そうして、新田君の夢は江ノ電の協力により、
実現することになったのです。

運転の当日、この日は11月にしては、とても暖かい日でした。

救急車で藤沢駅に到着した新田君が、
運転士の制服に着替え、付き添われながら運転席に座ります。

江ノ電がゆっくりと駅を出発しました。

藤沢駅を離れると、
新田君の視界にとても嬉しい光景が飛び込んできました。

江ノ電を愛してくれる新田君に対し、
この鉄道会社でも、彼に誠意を尽くしたいという気持ちを表します>>>

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駅で、新田君を驚かせ、喜ばせた光景がありました。

ふだんは無人の駅もありましたが、
この日はすべての駅に、駅員が待機していました。

そして、運転席にいる新田君に向かって、
直立不動の敬礼で見送ります。

自分に向かって、憧れの駅員さんたちが敬礼をしてくれている、
どんなにか新田君の胸に響いたことでしょう。

またスタッフは、喜ぶ新田君の様子をみて、
運転免許を持たない彼だが、運転席に座るだけではなく、
何とか本当に電車を運転させることはできないだろうか、
強くそう思いました。

スタッフが用意した免許を必要としない
検車区間に電車が進むと、
新田君はレバーを握り、自分の力だけで電車を動かしたのです。

その間、彼は病気だとは思えないような笑顔で、
目を輝かせながら電車を運転していました。

その3日後でした。

夢を叶えた新田明宏君は、遠くに旅立ちました。

その後、この新田君のお話は、
「小さな運転士 最後の夢」
というドラマになって、テレビで放映されました。

江ノ電の本社には、新田君の描いた絵が飾られています。

自分が江ノ電を運転しているところを描いたものです。

江ノ電をこれほどまでに愛してくれた少年がいたことを、
社員全員が忘れないために掛けられているのです。

参考:「涙を幸せに変える 24の物語」フォレスト出版

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