親切というのは、目立たないところにもひっそりと・・・

b509
校時代は、嫌な時代だった。

クラス全員から、冷たい眼で見られているような気がした。

でも、ちょっとしたある日の出来事は、
その頃のいい思い出として残っている。

学校帰りの夕方、朝は晴れていたのに、
運悪く、夕方はどしゃ降りの雨が降ってきた。

バス停で濡れ、バスを降りるとき、
濡れた床に足を取られ、豪快にぶっ倒れてしまった。

バスの運転手が面倒くさそうに、
「大丈夫か?」の一言。

その顔がひどく冷淡に見え、
返事もせず、慌ててバスを降りる俺・・・。

まだ強く雨が降っている。

傘など持っていない。

『転んでドロドロだし、もうどうでもいいわ』
とヤケクソ気味に歩きだすと、背後から声をかけられた。

(なんだよ?)
心の中で毒づいた>>>

スポンサーリンク

↓Facebookの続きは、こちらからどうぞ↓

の~、○○寺に行きたいんですが・・・」

眼鏡をかけた初老のおじさんと、その奥さんらしい人。

鬱陶しく思いながらも、一応のところ、ちゃんと道を教える俺。

足早に帰ろうとしたら、
「行き先途中まで一緒に行きませんか」
とおじさん。

俺が不機嫌な顔で断っても
「まぁ、いいじゃないですか」
と、ニコニコしながら、傘に入れてくれたおじさん。

身体の大きい俺。

おじさんの傘は小さく、おじさんの肩がはみ出て濡れてしまう。

俺が「濡れたら悪いので走って帰ります」
と言っても、
「濡れついで。道も分からないし、つきあってくださいな」

寺は一本道なんだけどな・・・

そうこうしてるうちに俺の家の前まで来た。

「ありがとうございました。寺はすぐそこです」
と礼を言うと、おじさんは、
「ありがとう、助かったよ。
 風邪ひくから、すぐ体ふきなよ。じゃあね」
と寺に向かい歩きはじめた。

なぜか小さくなっていくおじさんの背中を眺めていた俺。

「お父さん、お寺なんか行ってどうするんですか(笑)
 もう閉まってるだろうし」

おじさん、傘に俺を入れるため、
行きたくもない寺まで歩いてくれたのかな・・・

雨で冷たくなったはずなのに、
なぜか俺の体が温かくなったような気がした。

スポンサーリンク