ある嵐の晩、枝が折れいもむしは、
りんごに掴まったまま、木の下の川に落ちてしまいました。
「ぼくは、いずれ食べ物が無くなるか、干からびて
死んでしまうんだろうな」
そう思うと、いもむしはとても悲しくなりました。
「でも、あと1日だけ、とりあえず今日だけ生きてみよう」
そう思ったいもむしは、足元のりんごをかじり始めました。
…りんごの船が転覆しないように気をつけて。
とうとうりんごも皮一枚を残すのみとなりました。
これ以上かじったら穴が開いて沈んでしまうでしょう。
「これで、ぼくのできることはもう何もないな」
そうつぶやいて、いもむしはじっと横になりました。
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心細いりんごの船は、いもむしを乗せて、
もう沈むばかりに揺れていました。
流れの先には、大きな石が見え、
そのずっと先には、滝が見えます。
いもむしは、川の底か、
または滝の下に沈むのが目に浮かびました。
石にもぶつからず、リンゴの船は前に進みます。
流れが早くなり、もはやりんごの船は滝に向かって、
まっしぐらに突き進みます。
ああ、りんごの船は虚しく滝の轟音とともに、
姿すら見えなくなってしまいました。
滝ツボに飲まれたりんごの船でした。
しかし、何ということでしょう。
よく見ると、水際から何か動くものが見えます。
そこから滝つぼに落ちる刹那に羽化した
1匹の美しい蝶が飛び立ったのです。