20年くらい前の出来事・・・。
僕の家は、普通の人が想像も出来ないくらい田舎にあった。
僕はまだ中学生で、制服かジャージしか持ってなかった。
それで、来年から高校生になることだし、
家族で東京見物しながら、買い物しようってことになった。
正直、僕は初めての東京で、緊張していたけど、
両親は、もっとひどく緊張気味だった。
道が分からず、そこら辺の人に声をかけるけど、
びっくりするような大声で声をかけるから、逃げられるし。
駅の自動改札口では、思いっきり挟まれて、後ろに迷惑かけるし。
満員電車で、父ちゃんは、母ちゃんを守ろうと、
片手に吊革、片手に母ちゃんの手を握り、
結局、両手が死ぬほど広がって、大きな悲鳴をあげるし。
今考えると、田舎もん丸出しだった。
一番まいったのは、お小遣いで5,000円もらい、
入ったお店で、ベルトと帽子だけ買って出たことだ。
正確には、ベルトと帽子しか買えなかったんだ。
どれも目が飛び出るほど高くって。
そんなこんなで、東京からの帰り道、
夕闇を走り抜ける列車に揺られながら、
父ちゃんが、こうつぶやいた>>>
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「すまなかったな、おい、
俺が何にも知らんから、
お前たちにまで、恥かかせちまって」
すると、すかさず母ちゃんが言った。
「楽しかったですよ。
家族一緒なら、どこへ行っても楽しいんですよ。
あなたの方こそ、慣れない所に来て、大変だったでしょう。
ゆっくり休んで下さい」
父ちゃんは、「あぁ・・・」
とだけ言って、目をつぶった。
その時、
父ちゃんの目から涙がこぼれているのを、僕は見たんだ。
あれから10年・・・
父ちゃん…。父は、去年亡くなった。
そんなことに涙を流せる父が好きだった。
不器用だけど、
家族を本当に愛してくれた父のことを、
ふと思い出した。