私には年上のいとこがいて、とても面倒見が良く、
毎日のように遊んでくれました。
自分の家とは15分ほど離れた所に住んでおり、
いとこが私の家に遊びに来ることが多かったです。
その道の途中に、地元の子供達が使う近道があって、
グルッと回り道しないといけないところを、
7メートルくらいで通り抜けられました。
崖のふちを通るため、危険だから、当然大人達からは厳しく禁止されていました。
禁止されればしたくなる。子供とはそういうものですね。
その日もいつものように、いとこは私の家で一緒に遊び、
夕方に帰って行きました。
すると5分後くらいに、顔面蒼白で近所のおばさんが我が家に駆け込んできたのです。
「あんたんとこの子が 崖から落ちた」
いとこのことです。
反射的に母は、裸足で飛び出して行きました。
私は、そんな母の後ろ姿を見つめていました。
ほどなくして私も崖に向かい急ぎました。
崖のそばに近づいた時に、いとこの姿を一瞬見ました。
さっきまで元気だったいとこは、白目をむき、
体には力が無く、まるで人形のようでした。
私を見た母は泣きながら
「家にいなさい!!」と私を怒鳴りました。
それからしばらく後に、救急車の音が聞こえて、
そして、すぐに去っていく音も聞こえました。
いとこは頭から真っ逆さまに落ち頭蓋骨折、
その際に血が外にはでず内出血を起こしていました。
すぐに処置が施され、一命は取り留めたものの植物人間となりました。
一年以上「今は大事な時期だからお見舞いは我慢しようね。すぐに会えるよ」
と言って、私達ちびっ子達は会わせてもらえませんでした。
その代わりですが、テープに声を吹き込んで、それを病室宛てに渡し続けました。
私は、その頃すし屋さんになりたかったんですよ!
だから「お寿司作ってあげるから早く元気になってね」って、
毎回そればっかりなんです!
それからも植物状態が続き、後から聞いた話だと、
いとこの両親は医者から究極の選択の話までされたそうです。
そうして2年近くが経過したある日の夜、
いとこのお母さんが不思議な夢を見ました。
『見覚えのある坂道の上から元気な我が子が手招きをしている』
というものです。
それから数日後、奇跡が起こったのです>>>
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べットの隣に付き添って寝るのが日課になっていた、いとこの母でした。
彼女は深夜に聞きなれない音で目を覚ましました。
なんと我が子がうめいているのです。
気が動転した彼女は大声で息子の名前を呼びました。
するといとこは「お寿司たべたい」と言って目を覚ましたのです。
電話を受け、みんなビックリして病院に集合しました。
担当医までやってきて、涙を流しながら
「奇跡としかいいようがない」と繰り返していました。
人の力て不思議ですよね?
ただこの話まだ終わらないんです。
色々と後遺症は残りましたが、すさまじいペースで回復していったいとこは、
元々好きだった勉強を猛烈な勢いで取り戻し、
無事、地元の私立進学校に合格しました。
入学式の朝、高校の制服に袖を通す我が子を見て、
まさに夢のような気持のいとこの母。
バスに乗って高校へ向かいました。
高校最寄りのバス停で下車し、坂の上の高校へ向かう親子。
その途中、持ってこなくては行けない書類を忘れたような気がして、
お母さんは、バッグの中を確認したそうです。
なんせ朝から夢見心地なわけですから。
「確か入れたはず」と焦りながら確認していたその時、
「おーい、早くしないと遅れるよ!!」と息子の声。
「ちょっと、待って!」と顔をあげた母親は、言葉を失ってしまいました。
何とそこには、あの日の夢と全く同じように、
坂の上から手招きする元気な我が子の姿があったのです。