こちらに聞き返す間も与えないぶっきらぼうな電話。
電話は一方的に切れましたが、何のことか分かりません。
おばあさんとは、72歳になる私の母のことでしょうか。
そういえば、母は電車で隣町に買い物に出かけました。
そろそろ帰ってきてもいい時間です。
電話の声は、若い男の声で棒読み口調。
もしかして、いたずら電話かもしれない、
そう思いながらも私は半信半疑で駅に向かいました。
母が隣町になる高校の男子生徒数人に
取り囲まれているのが遠くから見え、私はたじろぎました。
身を固くして構え、負けてはいけないと自分に言い聞かせつつ、
私はたむろする彼らに向かっていきました>>>
スポンサーリンク
↓Facebookの続きは、こちらからどうぞ↓
髪型といい、改造した制服といい、
ツッパリの看板を自ら声高に宣伝しているような学生たちでした。
母が手を上げて私を呼んでいます。
私は勇気をふるって近づきました。
そして、母の話を聞き、へなへなと腰がくだけ落ちてしまいました。
母は帰りの車中で貧血を起こし、彼らに介護されたのでした。
座席を譲り、カバンで風を送り、渡線橋はおぶって渡ってくれたそうです。
180センチはある、ごつい体格の子がもじもじしています。
私は、しどろもどろになりながら、やっとお礼を言いました。
自分が恥ずかしくて、そして何よりもその高校生たちに
申し訳けない気持でいっぱいでした。
彼らは、ニコニコ笑いながら、名前も告げずに手を振って去って行きました。
私と母は、その学校長宛てに、心からのお礼状をしたためたのでした。
参考本:涙が出るほどいい話 河出文庫 「小さな親切」運動本部編