おっちゃんの兄貴は、おっちゃんと異なり、
エリートの商社マンでした。
あるアメリカの有名ブランドを日本に持ち込み、
○○ジャパンを設立しました。
その時、お前も暇だろうから手伝えと言われて、
猫の手ほどのお手伝いをしたことがあります。
その時のお話です。
ある時、アメリカからのお客様がありました。
この会社のブランド企業で、オーナーでありパートナーでもあります。
その会社は社名を聞けば、誰でも知ってる高名な会社であり、
訪ねてきた客は、創業者の孫娘と副社長クラスのエグゼクティブでした。
おっちゃんは、スマートな兄貴が、どんなに爽やかに相手と渡り合うのだろうか、
それを期待しながらちょこんと隣に座っていました。
しかし、その場は、ほんとは爽やかに、
にこやかに済まされるような場ではなかったのです。
ある問題について、お客さんのこのふたりは、
殆んどノーの答えを準備して来日したのでした。
当方としては、どうしてもイエスと言ってもらわなければ困る場面でした。
本当にタフなミーティングになることがお互いの胸中にありました。
相手方の早口の英語は、僕にはよく聴き取れませんでした。
でもなかなか論理的でスジが通ったことを言ってるな、ということは理解できました。
やばいなぁ、この展開は。
兄貴はどうやってこいつらに立ち向かうんだろうと、だんだん不安になってきました。
兄貴の説得の話が始まりました。
兄貴は、日本語でしゃべる時も決して饒舌なほうではありません。
また僕と同様、しゃべらせたら九州なまりがなかなか抜けなくて、
外観のスマートさとはアンバランスなところがあります。
英語もやっぱりそうでした。
九州なまりの英語で、ちょっともスマートではありません。
話の内容もややワンパターンであり、ドン臭ささえ感じられるほどでした。
僕の不安はいや増すばかりでした。
兄貴のドンくささは時間を追うごとに益々冴え渡り、
身振り手振りオオギョウに立ち回ります。
時にはつっかえ、時には口ごもりしながら、
それでもあきらめることをせず、ワンパターンの言葉をただ彼らに投げ続けました。
言ってることは、
「私の意見はこれこれだ。なぜならばそれはこうこうだからだ」
そのことばかりを何度も何度も繰返しました。
時間はドンドン経過していきます。
次第に、ふたりの外人の顔つきが変わってくるのがわかりました>>>
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ふたりの顔つきがどう変わってきたか?
明らかに、兄貴の気持に近づいてくる表情に変じてきたのです。
当初生意気に見えていた美人の孫娘も、ツンとした顔が優しい顔に変わってきました。
エグゼクティブの表情にも笑みが見えてきました。
そうして、結局はこのふたりの同意を得ることができたのでした。
いったい、人が人の共感を得るポイントとは何なのだろうか?
それをこの時の兄貴の真摯なドンくささから学ぶことが出来たのです。
外人だからといって、特別の論理を用意することはない。
由緒正しい血統のお相手だといえ、
考えを述べるのに何を遠慮などすることがあるか。
アメリカのお客さんと言えど、特別流暢な英語で相対する必要もない。
伝えるのに必要なモノは、「熱」と「あきらめず」繰返すこと、
それだけでいいんだ、そんなことを感じました。
最後に孫娘が兄貴に言いました。
「あなただから、このブランドを任せられる」
兄貴をまた一つ見直した瞬間でした。