東日本大震災から一か月後、津波に流された岩手県陸前高田市の自宅跡で、
海に向かってトランペットを吹く少女がいました。
彼女は、先の大震災による津波で、
母と祖母、叔母、いとこを亡くしていました。
祖父は今も不明とのことです。
3月11日午後2時46分。
彼女は学校で吹奏楽部の練習中でした。
教室の天井が落ち、校庭へ逃げました。
3時21分、母から携帯にメールが届きました。
「落ち着いて。あなたはそこにいなさい」
しかし・・・。
母からの携帯はもう鳴ることはありませんでした。
現実を受け入れられず空っぽの心で、
天井を見つめる夜が続きました。
火葬が終わった後、気持ちに区切りをつけるため、
母が好きだった「負けないで」を聴かせようと思い立ちました。
「私は元気。心配しないで」
自宅跡で海に向かい、泣きながら旋律に託しました。
翌日の新聞に載った涙を拭きながら楽器を抱きしめる写真を、
ある交響楽団のトランペット奏者らが見ました。
彼も宮城県石巻市出身でした。
「写真から悲しい音色が聞こえるようだった。
何かのきっかけにしてほしくて」
と今回のコンサートの出演を依頼しました。
コンサートに参加するのは、
被災地出身者を中心としたプロばかり。
最初、彼女は戸惑いました。
「私で大丈夫かな」
でも、数日考えて心を決めました。
「津波の怖さ、被災者の悲しみが、
一人でも多くの方に伝わるのなら」と。
津波で亡くなった祖母が買ってくれたトランペットとともに・・・。
震災から70日経ったその日、
少女は東京オペラシティの舞台に立っていました。
聴衆約1,500人に披露したのは、
あの時、天国の母らに捧げたZARD(ザード)の「負けないで」。
お母さん、おばあさん、叔母さんらに・・・
そして亡くなった幼なじみ、
両親を失い、転校した友人、
地震の被災者に想いを寄せて、
彼女は心をこめて精一杯演奏しました。
そのときの彼女の会場での様子を
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彼女は「負けないで」の後に「威風堂々」、
そしてアンコールの「故郷」を吹きました。
「故郷」では演奏に聴衆の合唱が加わり、
天国へ届ける歌が会場を包み込みました。
「負けないで」の演奏中、何度か涙を拭いました。
舞台を退いた後も鳴りやまない拍手に、
再び壇上に上がると、こらえきれずに
顔を覆って号泣しました。
大丈夫。
彼女なら負けはしない。
希望を感じさせる瑠璃さんの笑顔に
惜しみないエールを贈ります。