きっと古臭い、かび臭いと、
皆から一笑に付されることと思う。
木綿のハンカチーフといえば、
遠距離恋愛を反射的に想起する。
遠距離恋愛とくれば、公衆電話が思い浮かぶ。
赤電話のころは、10円玉をポケットいっぱいにふくらませて、
駅前の公衆電話の列に並んだ。
自分の番が来たら、後ろの同じような若者の目線を気にしながら、
彼女の声に耳をそばだてた。
東京から九州までの10円玉は、
高速度で電話機に吸い込まれていった。
負け惜しみかもしれない。
逢ったり、触れたり、聞いたり、話したりが思うに任せない、
そんなときにこそ愛が育つのだと思った。
今はすごく便利だな。
すぐ聞き、すぐ話せる。
それにネットを使えばすぐに顔が見える。
だけど、おっちゃんは思う。
便利だけど、君たちは幸せだろうか?
笑ってもいいが、おっちゃんは確実に幸せだった。
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