NHK朝の連続テレビ小説「とと姉ちゃん」というドラマがありました。
4年前の2016年4月~9月末にかけて放送されました。
ドラマが始まって間もないある日の一場面です。
とと役(父親役)の西島英俊さんも、主役の高畑充希さんも、
「ホン」を見ただけで何度も泣きそうになったそうです。
その日は、家族みんなで、紅葉狩りへおでかけ予定の日でした。
ところが、大切な取引相手の専務さんの引っ越しと重なりました。
ととは引っ越しの手伝いのため、家族でおでかけの約束を守れなくなりました。
晩になると、専務さんを自宅に招いてのお酒の席です。
酔っ払った専務さんは、ととにいいものを上げると言って、
額装の絵画を渡します。
ピカッタという高名な画家の作品でした(ピカソのことでしょう)。
丁重にお断りするとと、しかし無理やり押し付ける専務さん。
結局、その絵画を部屋の中に飾られました。
翌日、大事件が起こります。
家族の誰もが留守のとき、三姉妹の末っ子、
美子(よしこ)が、その絵に墨でいたずら書きをしてしまいます。
帰宅した次女の鞠子(まりこ)が、それを見届けて驚き、
その絵の墨を風呂場の水で落とそうとします。
しかし、薄墨色が広がってしまいました。
長女の常子(つねこ)が帰宅し、同じくビックリ仰天して、
今度は、絵の具で汚れを糊塗しようとします。
これも当然ながら、事態を悪化させるだけでした。
その頃ととは、会社で昨夜の専務さんからの電話を受けます。
電話の用件は、昨夜の絵画についてのこと。
酔って、つい勢いで差し上げたが、
高額な絵なので、悪いが返してくれとのことでした。
絵を返却するために、会社から急ぎ帰宅したととですが、
その絵の無残な状態を見て、愕然とします>>>
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ととは、三人になぜこうなったのかを尋ねました。
長女の常子、
「私が絵具で汚したからです」
なぜ絵具で汚したのかを問うと、次女の鞠子が、
「私が墨を水で流したからです」
なぜ墨がついたのかを問うと、
三女の美子が、
「ほんとはお出かけの日だったのに、
あのおじさんのせいでお出かけできなかった。
それに、ととに威張ってたおじさんのあの絵が憎らしかった」
と言います。
しばらくの重い沈黙の後、ととが言いました。
「わかりました。安心しなさい。
この責任は一切ととが受けます」
ちなみに、ととは妻・子供たちに、いつも丁寧語で語りかけます。
場面は専務さん宅に変わります。
無残な状態の絵画を携え、とと、それに三姉妹が、
専務さんの前で頭を垂れています。
人格高潔なお父さんが、謝罪の場に娘たちを同席させるのは、
どうも不自然だなとは思いましたが、これは後に続く場面のために、
どうしても、そんな設定にしなければいけなかったようです。
ととは土下座して、専務さんに謝罪しました。
「お許しください。時間をいただければ、必ず、全財産をはたいても、
弁償させていただきます」
烈火の如く怒る専務さん・・・
かと思いきや、そうではありません。
実は、この絵は贋作だったのだと言います。
安物だから、そんなに恐縮する必要はない。
後で、贋作だと分かるのも恥ずかしいから、
返してほしいと言ったのだとのこと。
「よかった!」
三姉妹から思わず笑顔がこぼれます。
ととは、専務さんに言いました。
「重ねて厚かましい申し出ですが、
この絵を譲っていただけませんでしょうか」
そうして、ととは、その汚い絵を専務さんから買い取りました。
帰りの道すがら、常子はととに聞きました。
「ととは、どうしてこの絵を、
お金を出してまで買ったのですか?」
これに答えるととのセリフに、
多くの視聴者はグッときたのではないでしょうか。
「この絵は世間的には、何の価値もありません。
しかし、ととにとって、この絵は宝物にしたいものです。
なぜならば、この絵は三人が力を合わせて作った共同作品だからです。
常子は鞠子をかばい、鞠子は美子をかばい、美子はととのことを思って、
そうやって、この絵ができたんです。
家の居間に飾っておきましょう」
メモと記憶にたよって、記述しているので不正確でしょうが、
大間違いはしてないように思います。
そして、
「ごめんなさい」と、ととに謝る三姉妹に対し、ととが言います。
「いいえ、謝るのはととの方です。
ととは、お出かけの約束を守ることが出来なかった、
それが元々の原因ですから」
そう言って、ととは、三人の娘に対し「すみませんでした」と、
頭を下げるのでした。
以上、戦前の、律儀で微笑ましい家族の一場面でした。
オンデマンドでもご覧になれるかもしれません。
第三回目の、少しウルッとくるお話だったので、
メモしていたのを再現してみました。