しかし、その会社が業績不振になり、
リストラを実施せねばならぬ状態になりました。
こんな時の会社の環境は、疑心暗鬼になり、
雰囲気はますます暗くなってきます。
私は誰かが辞めさせられるなら、
自分が辞めれば一人は救われると思い、
自分から申し出て退社しました。
その後、し尿汲み取り(役場の現業職)
に従事することになったのです。
妻と長女は事情を理解し、早くに納得したのですが、
長男が反発して一週間も飯を食わないような状態でした。
長女は高校生で、長男は中学生でした。
反抗期の長男には無理もないことです。
でも、長男には時間をかけて言い聞かせました。
『職業に貴賎はない。
誰かがやらねばならない仕事が世の中にはあるんだ。
お前は、もし、友達の父親が汲み取りをしていたら、
そいつと付き合わなくなったり、
その父を軽蔑したりするのか』
諄々と言い聞かせ、ようやく長男も納得したようです。
ある日のことでした。
地元の本屋さんで汲み取り作業をしていたら、
女子高生数人が遠くから来るのが見え、
その中に長女がいるではありませんか>>>
↓Facebookの続きは、こちらからどうぞ↓
私の背中に冷や汗が流れました。
作業による汗ではなく、
脇の下からも悪い汗が出てきました。
友達の手前、こんな父親の姿を見られる娘の心境はどうだろう。
年頃の女の子です。
友達の見る目は、
彼女らにとって大きい意味を持つ年代でもあります。
娘が恥ずかしく思いやしないかと、
私は、とっさに物陰に隠れようとしたのです。
その時でした。
『お父さん、頑張って~』
少し離れた所から、この私に向けて、
娘が声をかけてきたのです。
この時の私は、驚きのあまり
複雑な笑いを返していたかと思います。
その後、深い自省の念がこみあげてきました。
私は、日頃言ってきたことと、
自分のとった行動の違いに情けなさを感じたのです。
職業に貴賤は無いという長男への説得は、
表面上だけの薄い言葉だったのか。
娘の方が人間としてどれほど立派か、
それを思い知らされた場面でした。
今でもこの時のことを思うと、
娘への感謝とともに、自責の涙がこぼれ落ちます。