だから落とし物は交番に届けるようにしてる

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前、友人A子と歩いていたときに、A子が財布を拾った。

中身は5千円ほどだったけど、カードなども入っていた。

財布を拾った場所の近くに交番などが無かったので、私はA子に、
「近くの店とかに預ければいいじゃん」
と言ったのだが、A子は
「交番に届けた方が確実」
と言った。

A子の言い分が正しいと私も分かってはいたので、しぶしぶそれにつきあった。

交番に行きがてら、友人は小さい頃の話をしてきた。
 
 
 
A子の家は、割と貧乏だった。

そして、親戚づきあいもあまりなく、お年玉をもらったことがなかった。

毎年、冬休みがあけて周りの友人が
「いくらお年玉をもらった」
という話でもりあがっているのを、彼女は悔しい思いで聞いていたらしい。

しかし、小学校5年になって、A子は初めてお年玉をもらった。

「A子ちゃんももう高学年だもんね」

母親はそう言って、お年玉をくれた。中身は千円。

周りの友達に比べて額は少なかったが、
実はA子があこがれていたのはお年玉をいれるポチ袋。

年末に文房具屋さんなどに行くとかわいいものがけっこう売ってて、
スヌーピーやキティちゃんなどのキャラクターのポチ袋が欲しかったらしい。

で、母親が入れてくれたのは、

A子がその当時大好きだったケロケロケロッピのポチ袋だった。

A子はうれしくて、キタキツネの小さい巾着に、
千円とポチ袋を入れてランドセルにひっかけた。

お金を使うことなく、ずっとお守り代わりのように
それを持ち歩いていたそうだ。
 
 
 
しかし、ある日その巾着をなくしてしまった。

巾着自体、小学校の友達が北海道土産にくれたもの。

巾着、千円、ポチ袋と、A子の当時の宝物三点セットを
いっぺんになくしてしまい、そりゃあもうパニクったそう。

とにかく、自分が歩いた道をくまなく探し歩いた。

しかし、みつからない。

気がつくと、遅い時間になっていた。

そういうとき、タイミング悪く雨とか降ってくる。

巾着は布製で、もし見つかったとしても、
三点セットはぐちゃぐちゃになってしまっているだろう。

A子は泣きながら家に帰った。

家に帰る道すがら、交番の前を通った。

傘も差さずに遅い時間、とぼとぼ歩いている小学生に、
交番のお巡りさんが気づいて声をかけてきた。

「どうしたの?」

腰をかがめて聞いてくるお巡りさんに、A子は感極まって号泣した>>>

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巡りさんは交番に彼女を入れて座らせ、
タオルを貸してくれ、お茶をごちそうになった。

泣きやんだA子にもう一度理由を聞いてくるお巡りさん。

彼女は切れ切れに、宝物である巾着をなくしてしまったことを告げた。

お巡りさんはそれを聞くと、どんな巾着かと聞いてきた。

どうしてそこまで聞いてくるのかと思いつつ、
彼女は「キタキツネの巾着」と答えた。

そしたら、お巡りさんは満面の笑みをA子にむけた。

そして彼は、

「ジャッジャジャーン」

と口でファンファーレを言いながら、
机の上の箱からA子の巾着を出してくれたそうだ。

A子が驚いていると、近所のおばあさんが散歩中、
道に落ちていた巾着を拾って届けてくれたらしい。

おばあさん曰く、
「小さい子供にとっては、これが宝物かもしれないから」

まさにその通りだった。

A子は目の前にある巾着が信じられなくて、また号泣してしまったらしい。
 
 
 
「それ以来、落とし物は交番に届けることにしてる」

A子はそう言った。

次の日、母親と一緒に拾ってくれたおばあさんにお礼を言いに行ったそうだ。

おばあさんはお礼を言いに来たA子をしきりに褒めてくれて、
孫にお年玉にあげる際に買って余ったからと、
キティちゃんのポチ袋をA子にくれた。

交番に着いて財布をお巡りさんに渡した後に入ったスタバで、
A子はその時のケロッピとキティちゃんのポチ袋を、
財布から大事そうに出して見せてくれた。

彼女はにこにこしながら、
「今の彼氏、そのばあちゃんの孫」
と言った。

なんか、つながってるんだね。人って。

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