僕が小学生の頃、夜だけ家に寝に来るコロって呼んでた野良犬がいた。
僕と母ちゃんは動物好きだったけど、家は団地だったので、
正式にコロを飼うことはできなかった。
共働きだし、家に閉じ込めておくのは可哀想だしね。
賢い犬で、朝は僕と一緒に学校まで行ってた。
紐はつけない。
教室から試しに呼んでみたら(授業中)、
みごとに来たことあったからびっくりしたこともあった。
その後は夕方まで、勝手に遊んでたみたい。
ちゃんと帰ってくるからね、寝るために。
しかも、僕ん家は5階で、周りは似たような建物、
入口ばっかなんだけど分かるみたいなんだよね。
家に誰もいなくてもドアの前で待ってた。
(きっと隣の人とかは迷惑したろうな)
いろんな家で、世話になってたみたいで、
違う名前で呼ばれてるのを見たこともある。
でも夜には帰ってくるから、
きっとウチのことを気に入ってくれてたんだと思うな。
コロが、急に来なくなった。
とても心配して何日も僕は探し回ったんだけど見つからなかった。
母も僕も、きっと誰かちゃんと飼ってくれるいい人に
連れていかれたんだよと諦めた。
それから、10年も経ち、
僕ん家はめでたく一軒家に引っ越したのだが、
この間、母ちゃんが団地で仲のよかったおばちゃんとお茶したときに聞いた話。
そのおばちゃんは、コロの行方を人づてにきいたらしい。
それを聞き、10年経った後でも少しショックを受けた>>>
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コロは、どうも団地の近くの広い道路で車に轢かれて、
そのまま死んでしまったとのこと。
コロは賢い犬で車に轢かれるような犬じゃなかった。
人づてによるおばちゃんの話では、
その道路の反対側、ちょっと遠くに、少年の姿があったそうだ。
コロは、その少年を見つけて、飛び出したとのこと。
すぐに分かった。
その少年とは、10年前の僕のことだ。
アイツは、いつも僕を見つけると、喜んで飛んできて、
遠くからでも体当たりかましてくる奴だったんだ。
10年前、その瞬間に気付いていたら
僕はいったいどうしていただろう。
嘆き悲しんで、おそらく自分を責めたことだろう。
しかし、知らずにすませることはさらに寂しいことだ。
小さなショックで、コロの死を受け容れることができる今、
そのことを知って、かえって良かったのかもしれない。
その話の信ぴょう性はともかく、
今でも、僕は心の中で、実はコロはきっと誰かに飼われ、
幸せな老後を暮らしてるような、そんな気がしてならない。