名前はビル。
近所に事件が起こったりすると、
警察がビルを借りにきたりするほど優秀な犬。
茶色のまっすぐな優しい目で、
いつも私のことを見ていてくれた記憶がある。
ビルは本当に大きくて、ビルと一緒にいると、
おとなしい私が何だか自分まで強くなるようで誇らしかった。
大好きで大好きでビルの小屋で一緒に寝たいと、
両親を困らせたこともあった。
夏休みに友達が遊びに来た時、
些細なことでケンカしてしまい、友達は帰ってしまった。
(お人形を頂戴といわれ断ったのが原因)
めったに吠えないビルの声が聞こえて、
びっくりして外に出た。
友達がビルに石を投げていた。
走っていって友達を突き飛ばしてしまった。
ビルはその間ずっと吠えていた。
幸い友人の怪我はうちみ程度ですんだが、
当然私は両親と相手の両親からもこっぴどく叱られた。
ただ、おばあちゃんは「○○子が理由もなくそんな事はしない」
と言ってくれた。
友達は複雑な顔でそっぽを向いていた。
次の日の夕方ビルの散歩に行った時、
小川でビルが水を飲んでいるところをボ~っと座ってみていた。
ビルが隣に来ていつも通り横に座った。
暑かったけど心地よくって離れたくなかった。
ビルの目の上には石をぶつけられた時の傷があった。
悔しくて悲しくて涙が出てきた。
大声で泣いてしまった。
その時ビルは、ずっと私のほっぺをなめていてくれた。
ふとどこからか「もう大丈夫だから泣かないで」という声が聞こえた。
びっくりして後ろを向いても、どこを見ても誰もいない>>>
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ビルの顔をみるとジッと私を見ている。
また「大好きだから泣かないで」って聞こえた。
それから家に帰って、父や母にこのことを言っても
笑って信じてくれなかった。
だけどおばあちゃんだけは信じてくれた。
私が大学に入って、しばらくしてビルは死んでしまった。
老衰だった。
それから動物を飼うことはなかった。
今思うと子供の想像力か、単なる幻聴か、
情緒不安定な時でそんな声が聞こえたのかと思う時がある。
でも幻聴でもなんでもいい。
私を励まそうとしたことは確かだった。
大学を卒業し、普通に就職、そして結婚した。
今年の結婚記念日に主人がプレゼントを買ってきてくれた。
首にピンクのリボンをつけたシェパードの子犬だった。
あの目、ビルの目。
大泣きしてしまった。
私の泣きっぷりに主人はびっくりしてたけど、
理由を話したら「大事にしような」と言ってくれた。
現在私のお腹には7ヶ月の女の子がいる。
二代目ビルとお腹にいる子供が
良い関係になれたらいいと思ってます。