「これはどうしようか」
主人の手が止まっています。
その手には、電池で動く犬のおもちゃがありました。
それはどうしても捨てることのできない物のひとつだったのです。
5年前のことでした。
大おばあちゃんが、ひ孫である娘に買って下さった物です。
主人の祖母で、いつも元気だし、優しいおばあちゃんでした。
長女2歳の誕生日に買って下さった犬のおもちゃ。
スイッチを押すと、ワンワンと鳴いたりする電動式のおもちゃで、
すっかり娘のお気に入りになりました。
しばらくの間は、どこに行くにもワンちゃんと一緒。
どこかに居なくなると、泣きべそをかく娘でした。
それから間もなく、なんとおばあちゃんはふとしたことで転び、
足を骨折してしまい、入院することになってしまいました。
あんなにしっかりしていたおばあちゃんも、
少し気が弱くなったように見えました。
高年齢のため、入院生活は長く続きました。
娘が3歳になったある日の夜、突然、押し入れの中から、
思い出したかのように犬のおもちゃを取り出し、遊ぼうとしました。
しばらく遊んでいなかったせいか、
ワンちゃんは、歩きも鳴きもしません。
それを見た娘は、まるで火がついたように泣き出したのです>>>
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主人がそれを見て、
「電池が切れているんだよ、取り替えよう」と言って替えました。
しかし、やはりワンちゃんは動きませんでした。
まだ泣きやまない娘に主人が言いました。
「いっしょに楽しかったね。疲れちゃったんだよ。
少し休ませてあげよう」
なんとか、娘をなだめました。
この時は、何とも思いませんでしたが、
このようなことが、虫の知らせというものなのでしょうか。
翌日の朝、電話での知らせがありました。
主人の母からの電話で、おばあちゃんが亡くなられたとのことでした。
96歳でした。
医者の妻として、おじい様を支え、
貧しいお宅からは診察料ももらわず、家計を切り盛りしていたおばあちゃん。
戦後の貧しい頃だったから、お金の代わりに野菜をいただいたりしていたこと、
自分も聴診器ひとつで、おじいちゃんの往診についていったことなど、
ほがらかに語っていたおばあちゃん。
そんなおばあちゃんの葬儀には、多くの参列者が訪れました。
3歳になった娘も一握りの花を棺の中にそえました。
その時、娘が主人に言いました。
「大ばあちゃんに電池いれてあげて、
ねえ、大ばあちゃんに電池いれてあげて」
その言葉に耐えきれず、主人も私も目頭を押さえ、
その場に伏してしまいました。