2003年から始まったイラク戦争は、
治安の悪化による戦闘が長く続き、兵士も住民たちも、
緊迫と恐怖の日々を送ることになりました。
しかし、そんな状況の中にも心温まる
エピソードが生まれていました。
2007年、イラクに駐在していたアメリカ海兵隊の
ブライアン少将は、1匹の野良犬と親しくなりました。
その犬は、番犬として威厳を持たせるためか、
耳が切り取られていたので、ブライアンさんは、
その犬に「Nubs(こぶ)」と名付け、可愛がるようになります。
ただ、規則で駐在中にペットを飼うことは厳禁。
ブライアンさんは、その関係を友だち程度に
留めておこうと考えていたそうです。
しかし、Nubsはブライアンさんに癒しを与え、また、
ブライアンさんは動物を愛する余裕のない人間に虐げられた
Nubsを、ときには海兵隊の規則を破ってまでも救いました。
1人と1匹の関係は、日を追うごとに深くなっていきます。
ところが、ブライアンさんに約120キロ離れた
ヨルダンの国境近くへの異動が命じられました。
さすがにNubsを連れていくわけにもいかず、
ブライアンさんは泣く泣くNubsに別れを告げることにします。
別れの日、Nubsはブライアンさんの乗る車を
懸命に追いかけましたが、
その距離は離れていくばかりでした>>>
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新しい任地に着いて2日ほど過ぎたある日のことです。
「少将!こちらに来てください!」
部下の叫び声に応じて外に出たブライアンさんは、
信じられない光景を目にします。
それは、ボロボロになりながらも、
跳びはねて再会を喜ぶNubsの姿でした。
Nubsの身体の汚れや傷を見ると、
大変な旅路であったことは明らかでしたが、
どうやって約120キロの、それもほとんど砂漠の道程を
歩んできたのかはわかりません。
しかし、確かにNubsは、
ブライアンさんのもとにたどり着いたのです。
ブライアンさんは、Nubsとの関係を断つことはできないし、
断ちたくもないと思います。
そこで、アメリカの家族に
何とかアメリカにNubsを運べないかと相談しました。
そして、ブライアンさんの家族はインターネットを通じ、
アメリカ中に呼びかけて寄付を募り、
イラクからアメリカにNubsを移住させる費用、
5,000ドルを集めることに成功します。
Nubsがブライアンさんの家に到着してから1カ月後、
ブライアンさん自身の帰国も決定し、
1人と1匹は再会を果たしました。
それから、ブライアンさんとNubsは
幸せな生活を送ることができたそうです。
参考本:「寝る前に読んで下さい2」(アルファポリス文庫)
著:佐藤光浩