学校の図書室で素敵な本を見つけました。
めったに読まない詩集です。
有名な詩人たちの詩がたくさんのっている詩集です。
ぱらぱらめくると、とても魅力的な言葉が
次々と目に飛び込んできました。
題名は「女の子のマーチ」。
けんかが強くて負けず嫌い、いつもおしとやかでいなさい
と言われている女の子の悩みの詩です。
一行読んでも、二行読んでも、
「おお!!私のことだ!」
と口走ってしまうほど今の私にうりふたつ。
私は自分のことが詩になっているみたいでうれしくて、
どうしてもそれを母に読んであげたくなりました。
私はその本を借りると走って家に帰りましたが、
母はまだ帰っていませんでした。
仕方がないので、かばんを放り投げ
遊びに行くことにしました(男の子も一緒です)。
夕方になったので家に帰ると、
玄関にあるはずの詩集はテーブルの上にありました。
「しまった、おこられるかもしれない」
そこで私はあわてて詩集の話をし始めました。
すると母は笑って、
「やっぱりね」
と言ったのです。
母は続けました。
玄関に放られたかばんから詩集が飛び出していたこと。
いつもは詩など借りてこないのに珍しいと思ったこと。
そして、一編の詩にすぐ目が留まったこと。
詩の中の少女と私が重なり思わず笑ったこと。
さすが私のお母さんだと思っていると、
母は自分の大きな仕事かばんから、
何かを取り出しました。
それを見て私はほんとにびっくりすることになりました>>>
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母が仕事かばんから取り出したもの、
それは一冊の本でした。
それをうれしそうに私に見せました。
図書館で借りたばかりというその本は詩集でした。
そして、私の本のあのページを開き、
「両方の作者を見てごらん」
と言いました。
そこにはどちらにも「茨木のり子」と書かれていたのです。
同じ日に同じ人によって書かれた詩に
心をひかれたという偶然がキラキラと輝いています。
私はとてもうれしくなりました。
母は言います。
「私の本で感動。あなたの本で感動。同じ作者だったことに感動。
今日は一粒で三度もおいしいね」
夕食の支度をしながら母はにこにこしています。
私もにこにこしています。
次の休みの日、私は母と本屋に行くことにしました。
あの二冊の詩集を注文するために。
けんかして母のことが大嫌いになっても、
この二冊を手に取れば、あの時の偶然と感動を思い出し、
すぐに仲直りができそうな気がしてきました。
何も言わないけれど、母も同じ気持ちかもしれません。
今、二冊の本は仲良く並んで私の本棚に入っています。
参考本:NTTふれあいトーク大賞優秀作品集(NTT出版)
「やっぱり親子」より