天使と呼ばれたお爺ちゃん

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使と呼ばれたお爺ちゃん、ドン・リッチーさん。

リッチーさんは、ちょっと変わった紳士でした。

彼が住んでいたのは、オーストラリアで、
自殺の名所とされる崖の近くでした。

シドニーの観光地でもあり、一方で自殺者が絶えない場所でもあったのです。
通称「ザ・ギャップ」と呼ばれるエリアでした。

月に一人は自殺を図る人が出るそうで、
彼は約50年に渡って、飛び降り自殺をしようとする、
多くの人の命を救ってきました。

1964年に移り住んで以来、
リッチーさんは、約160人の命を救ったといいます。

自宅の窓から海を眺めるのが好きだったリッチーさんは、
悩みを抱えた人にとても敏感でした。

毎朝、必ず窓の外を見て、
誰かが絶壁に立っていないか、確認していたそうです。

もしそこに、誰か飛び降りそうな人がいたら、
駆けつけて、リッチーさんはただ一言の言葉をかけたそうです。

その一言とは>>>

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ッチーさんがかけるひと言の言葉…

「僕に何かできることはないかい?」

リッチーさんの息子さんは、こう言っています。

「多くの場合、それだけで十分だったんです。
優しい言葉と笑顔の持つ力をみくびるな
と父は言ってました」

もちろん、助けられなかった人も大勢おり、
多くの自殺風景も見てきたといいます。

リッチーさんは、その時はその時で、
もう自分に出来ることはなかったのだと、
ただ潔く現実を受け容れました。

2006年、リッチーさんは功績を称えられ、
政府から勲章を贈られました。

2010年、妻と共に名誉市民賞。

2011年、オーストラリアの英雄市民賞を受賞。

2012年5月13日 死去 享年86歳。

地元紙は、
「シドニーの悩める人々は天使を失った」と報じました。

またオーストラリア政府は、
その年にメンタルヘルスに最も貢献した人を、
「ドン・リッチー賞」という名称で称えることを発表しました。

リッチーさんが救った命は、公式記録では約160人です。
しかし、実際に救った人数は、もっと多かったと家族は信じています。

「ここに住んでいれば、
 たくさんの人を救うことが出来るのです。
 素晴らしいことだと思いませんか?」

天使と呼ばれたお爺ちゃん、ドン・リッチーさんの口癖でした。

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