埃だらけの古物修理だけど、誇りを持っている

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分は20代。事情があり、祖父母に育ててもらってきた。

今はじいちゃんの仕事を継いで、
昔の時計とかラジオとかを修理する店で働いている。

修理してほしいと持ち込まれる品は、
今まで押入れだったり、蔵に放置されていたものだったりする。

なので、たいていホコリや油、土まみれになっている。

修理が終わるころには、手も顔もズボンも作業エプロンも真っ黒になるほど。

ある日のことだ。

ひとりの若い男性が、物品を抱えてやってきた。

亡くなった爺さんの家の倉庫から、
貴重な時計やら蓄音機やらを発掘したので、
修理してほしいとのこと。

僕が見ても結構な貴重品たちで、
修理代はちと値が張るが、
昔のものは何度でもきちんと動くように設計されている。

だから、「お任せ下さい」と仕事を受けた。

そのときの男性は、
「動くようになって帰ってくるんだー!!楽しみ!!」
ってキラキラしていた。

4日後に修理完了の電話をし、
引き取りに来ててもらった時には、
その男性は、何やらおキレイな彼女を連れていた。

小さな店に20代の若い方が来ること自体珍しいので、
僕はちょっと緊張して挨拶をした。

そうしたら、私を見るなりその彼女が
ちょっと眉をひそめたのを僕は見逃さなかった。

僕が彼らに背中を向けている時に、

彼女が小声でささやいた。

「なに・・・きたないカッコ・・・いやだぁ・・・」と。

(聞こえてますよぅ・・・)
かなりイラッとしたけど、お客さんだし、
まあ歳も同じくらいの女性だから仕方ないか。

油まみれの手と、(夏場だったので)汗も沢山かいてたから
そりゃそう言われるても無理ないな・・・と凹んだ。

しかし、男性は彼女のささやきが僕に聞こえていたのを察したのだろう。

「祖父の形見をきれいに修理して下さってありがとうございました。
 でも、こうやって汗をかいて、土や油で真っ黒になりながら、
 他人の物品を宝に変えてくれるなんて素晴らしいことです」

さらに続けてこう言ってくれた。

「そんな素晴らしい職人さんに、
 とても失礼なことを聞かせてしまいました。
 本当にごめんなさい。本当に。」

びっくりした。

僕がびっくりしたよりも、彼女がすごくびっくりしていた。

と思ううちに、彼女、次には顔を赤黒くさせていた。

僕の気持としては、スッとして溜飲の下る思いだった。

だけど何だか、自分がものすごく悪いことを
してしまったようで気まずかった。

それで、
「あっありがとうござます!でもすみません!
 品、こちらです!!」
って変なことしか言えなかった。

ササッと品を受け取ってもらい、御代をもらって、
その2人はその日、普通に帰って行った。

そんなことがあって1ヵ月後、
その男性がまた店に来た。

何の用だろうか?>>>

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の時は連れが失礼なことを…」
と、わざわざ謝罪に来て下さったのだ。

僕自身も客商売なのに、身なりに気を使わな過ぎて、
引かれてしまうのも無理ないと答えた。

そしたら男性が話してくれた。

あの時のことだけでなく、以前から彼女は、
人を馬鹿にしたり、見下すような言動が多くて悲しかったこと。

働いたことがないのに、自分の立場をわきまえないので、
常々、そんな態度を諌めていたけど、なかなか改まらないこと。

何よりも、そんな女性だと気づかずに
付き合ってしまった自分が一番情けない、
そんなことを話された。

そして、
「だから、あの後別れました。」
となぜか、僕にことの顛末を話してくれた。

僕は、
「あぁ、それは・・・大変でしたね・・・」
そんなことしか言えなかった。

その後は何かすっきりしたのか、男性は修理品の話をし始めて、
立ち話も何だったのでお茶を出して、
カウンター前の小さい椅子に座ってもらった。

「あの時計、相当昔のものなのに、またちゃんと時を刻んで、
 カチカチ鳴って、ボーンって音鳴って・・・
 昔の人すげえっすよね!!それを修繕する人もすごい!」
とか目を輝かせ、ハツラツとしゃべっていた。

今までもお客さんに
「ありがとう」「うれしいよ」
って言ってもらえるそのたびに、仕事に誇りを持てた。

その人にとっての大事なものを、
また大切に使ってもらえるように、僕はまた頑張るぞって・・・。

でも同年代に褒められるなんて滅多にあることじゃない。
僕は何か単純に嬉しくて、じいちゃんも修理部屋から呼んで来た。

次のお客さんがいらっしゃるまで、
骨董とか古物の話で3人、すごく盛り上がった。

その時は、すごくすごく嬉しかったのを覚えている。

その後も、その男性は店に「修理品を持ってこない」客として
ちょくちょく通うようになった。

今ではじいちゃんの技術を継ぎたいといって、店で修行中の身だ。

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