おかげで列車事故を招かずにすみました

b200
事中に体験した話です。

仕事は列車の運転士をしています。

その日は大雨の中、最終列車の乗務をしていて駅に停車中でした。

やがて出発時刻となり、
信号が青に変わった瞬間、信号が消灯してしまいました。

おいおいこのタイミングで球切れかよと思いながら、
無線で指令に連絡しました。

こういう場合、赤信号とみなすという規則なので、
しばらくその駅で足止めになりました。

指令センターから指導通信式(赤信号で列車を出発させるやり方)で、
列車を出す準備をすると言われました。

しかしその時の乗客のお二人ともが、
家族に迎えに来てもらうと言われたので、
その方法は取らず復旧まで待つことになりました。

1時間後信号は復旧し、回送車として終点を目指し運転を再開しました。

原因は、信号ケーブルを動物に噛まれたからでした。

おそらく狸と思われます。

しばらく走り、峠の急勾配を登りきったところで
駅の灯りが見えてきたのと同時に、ホームに人影が見えました。

まさか、最終に乗ろうとしてた客だろうかと思いましたが、
この駅から最終に乗る人なんて、いまだ見たことがありません。

だんだんホームに近づくと、何とその人影は線路に身を投げたのです。

言葉も出ず非常ブレーキを掛け、ただひたすら止まるのを願いました。

ホームを少しはみ出たところで列車は停止しました>>>

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全に轢いてしまったと思いましたが、
衝撃は全くありませんでした。

台車回りを確認していると、3匹の動物(たぶん狸)が、
線路と台車との隙間から出てきて走り去って行きました。

その姿を目で追っていると、ヘッドライトに照らされた
進行方向の線路が少々歪んでいるのが見えました。

「…ん?」と思い近づいてみると、バラストと枕木が流出していました。

大雨で山からの水に耐えきれなかったのだろうと思います。

もしあのまま走っていたら、確実に脱線していたことでしょう。

ひょっとしたら、狸がなんとかして
列車を止めようとしてくれたんじゃないか、
そんな風にも思えます。

最初のシグナルはケーブルを噛むことによって、
二度目のシグナルは、ホーム上の人影によって…。

ちなみに人影は”もわ~っ”とした感じで、
背格好は人間って感じでした。

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