バッティング投手という裏方の職種があります。
練習の際、バッターのバッティング練習のためだけの投手という役割です。
もちろん、この役割は誰でもいいというわけではなく、
ある程度の投手経験と、正確なコントロール、多様な球種など、
一定の能力を保有していなければいけません。
ただ多くの場合、試合の現役として投げるには不十分であり、
最前線から一歩退いた後方支援という位置づけになります。
巨人軍には、長年バッティング投手を務めた峰さんという人がいました。
最初は大洋ホエールズ(現・横浜DeNAベイスターズ)に所属していました。
しかし、なかなか芽が出ず解雇通告を受けます。
その後、何と巨人から誘われ、喜び勇んで入団しました。
張り切って練習していましたが、首脳陣からは、
さっぱりブルペンへ行く指示が出ません。
そこで確認してみると、実は現役としてではなく
バッティング投手としての採用だったことが判明します。
春のキャンプ中まで、球団から説明は全くなかったそうです。
今だったら、そんなことはありませんが、当時はそんなこともあったのでしょう。
峰さん、知り合いのあちこちに、巨人へ移籍したんで頑張るとの報告をしていました。
だから、初めてバッティング投手という役割を聞かされたときは、
泣きそうな顔で、すっかり落ち込みました。
そんな時、ある選手から声がかかりました。
王選手です。
王選手は、峰さんにどんなひと言をかけたのでしょうか?>>>
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王さんから、こんなひと言をかけられました。
「峰ちゃん、俺、アンダーシャツ(ユニフォーム用)のサイズを
1ダースも間違えちゃってさあ、俺の身長には合わないんだけど、
峰ちゃんの身長には偶然合うと思うんだ。悪いけど使ってくれないかなあ?」
とアンダーシャツ一式をプレゼントしたそうです。
律儀で几帳面な王さんが、自分のサイズを間違えるはずがありません。
しかも王さんならば、自分で注文しなくてもメーカーから届くはずです。
気の毒なくらい落ち込んでいた自分を励まそうとして、
王さんが下手な嘘をついたことに、峰さんはいたく感激しました。
ちなみに、バッティング投手にとって、アンダーシャツは
いくつあっても足りないほど重宝するものなのです。
それ以後、峰さんは、ほとんど王さん専属の
バッティング投手として投げ続けました。
そして、王さん引退後も、裏方としてのプロらしく、
バッティング投手の仕事を長らく続けたそうです。