あなたが亡くなって家族に残してくれた贈り物(ギフト)

020
11年間飼ってた愛犬が亡くなった。

死ぬ前の半年間、私はろくに家に帰ってなくて、
世話もほとんどしなかった。

その間にどんどん衰えてたのに、
あまり見ることも触ることもなく、その日を迎えてしまった。

前日の夜に、もう私とはほとんど会話がなくなっていた母が、
兄と一緒に私の部屋に来て、
「もう、動かなくなって、息だけしてるの。
目も、開いたままとじれない。
最後だから、お別れしてきなさい。」
と泣きながら言ってきた。

そこまでだったなんて知らなくて、
びっくりして下に下りていったら、コタツに横たわってた。

ほんとに息だけしかしてなくて、
だんだん息も弱くなってるのがわかった。

怒りっぽい犬で、触るだけで唸るのに、
その日は、何も反応がなかった。

母と兄と、3人で、泣きながら朝まで見守った。

朝までこの子が息を途絶えさせず、
がんばったのは、おそらくこんな理由ではないかと思った。

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局その日の午前中に、
単身赴任の父が帰ってきた。

それを見届けるかのように、
この子はすぐに息を引き取った。

朝まで頑張ったのは、父のことが大好きだったから、
きっと待ってたんだと思う。

家族全員そろうのを待ってたんだな…って思う。

父は男泣きしながらも、
この子の頭を盛んになで、褒め称えた。

死ぬ間際に飲んだ水はすごくおいしかったよね。
幸せだったよね。

何よりも、本当にろくに家に帰らず遊んでばかりいて、
おまえの世話をしていなかったことを悔やんでる。

父も母も兄も涙にくれる中、私は後悔ばかりが心に残って、
あまり泣くことも出来なかった。

おまえが死んでから、お母さんとも会話するようになったよ。

今まで、お母さんの話し相手はおまえだったもんね。

おまえのおかげで自分がどんなに親を悲しませてたかわかった。

犬にまであたしのこと相談するくらい、おかあさん悩んでたんだね。

おまえが死んでふさぎがちだった母も最近元気になったよ。
安心して眠ってね。

昨日、死んでから初めてあなたの夢を見ました。
朝起きて、泣きました。

ほんとうにありがとう。

ばいばい。

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