どうしても今の政治家とこの人とを見比べると、
圧倒的な人間力の差があるように思えてならないからです。
過去の人を美化し、現在の人を矮小化するきらい無きにしもあらずですが、
いろんな条件を割り引いても「角さん」への好感を禁じえないのです。
特に自分より目下の人への気配りや、細やかな配慮のできるところなど、
果して、角さんの息のかかった政治家たちは学べているのでしょうか。
角さんの優しいお話ふたつです。
ひとつは、田中角栄、幹事長時代のこと。
都内のホテルで佐藤首相(当時)と会談をしました。
佐藤首相の秘書の女性が述懐したことです。
当時、その女性はある理由で経済的に苦しい状況にありました。
会談が終わり、田中幹事長がホテルを出る時、
その秘書の方は、玄関まで見送りに行きました。
車が出発する間際、田中幹事長の車の窓があき、彼女を手招きしました。
何だろうと思って近づいて行くと、
田中幹事長が「年は越せるかい」と声をかけてきたと言います。
「はい」と答えると
「何かあったら何時でも私のところに言ってきなさい」
と言われたそうです。
その女性は驚きました。
自分の事情を知ってることもさりながら、こっそりと声をかけてくれたこと、
その目が親身であったこと、そんなことに深く心を動かされたそうです。
もうひとつは、大蔵大臣の頃のお話です。
所得税法改正の審議が行われていました。
審議には「税率表」という議論のベースになる表が使われます。
ところがその表が、官僚のミスで誤った計算に基づくものでした。
正確無比の大蔵省では致命的なミスでした。
審議が始まっているから、訂正は不可能です。
官僚たちは青くなりました。
本来ならば、作成した役人、その上司はおろか、
下手をすると大臣の首まで飛びかねない状況でした。
この絶体絶命の事態もさすがの角さんは、
持ち前の気配りで切り抜けます>>>
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ミスを察知したマスコミや、野党が手ぐすね引いて、
攻撃の準備をしていました。
責任者の官僚が、辞表を胸に忍ばせ、田中大臣のもとを訪れました。
角さんは、笑いながら、
「そんなことで辞表など出すな。
失敗は次のための肥やしにしろ」
と一蹴しました。
後日の審議の場です。
田中大蔵大臣は、新しい「税率表」を持ち、堂々と言いました。
「先日提出の表には間違いがございます」
何食わぬ顔で、公表数字の訂正をしました。
野党もマスコミも沈黙したままです。
なぜか…。
角さん、水面下の根回しを行っていたのです。
不健全な寝技ではありません。
政敵には、個々に頭を下げて説明にまわったのです。
手ぐすね引いてる野党議員も、一対一での交渉において、
田中角栄に深々と頭を下げられたら、
その迫力(謝罪力)に気圧されたのでしょうか。
それとも、貸しを作った方が得策だと考えたのでしょうか。
形ばかりの攻撃で矛先を収めざるを得なかったそうです。
マスコミもほぼ同様だったようです。
かくして、部下である官僚からも
「心からついて行きたい」上司として、
信頼を得ていった角さんでした。