これが、六月に亡くなった祖父の夕飯時の口癖だったようだ。
金ちゃん、というのは僕のこと。
金メダルの金ちゃん。
「潤は、じいちゃんの金メダルじゃからなあ」
孫は四人とも同じように扱うようにと、
祖母にたしなめられながらも、
「だって潤はじいちゃんに野球みしてくれるし、
一番じゃもんなあ」
と、祖父はいつも僕の味方で応援してくれた。
祖父には、僕と兄、二人のいとこの四人の孫がいて、
僕以外の三人は、成績表に5や◎が沢山ならぶほど、
成績がいい。
そんな中で僕が引け目を感じたりせず、
好きなことをのびのびと出来るように、僕を金メダルにしてくれ、
小学校の頃から続けている野球を応援してくれた。
そんな祖父のユーモアのあるしゃれた優しさを、
家族みんなが分かっていて、僕はテストの点や成績が悪くても
「じいちゃんの金メダル」として、いつの間にか
特別な存在感を与えられていた。
祖父とのお別れは突然にやってきた。
五月にがんが見つかり、
抗がん剤治療のため入院して三日目のことだった>>>
スポンサーリンク
↓Facebookの続きは、こちらからどうぞ↓
亡くなる三日前、入院する前日には、
いとこやみんなでご飯を食べ、
「潤の甲子園の応援に行かんといけんから、
元気にならんとなあ」
と言っていたのに。
祖父がいなかったら、祖父の金メダルじゃなかったら、
成績なんか気にせず野球に夢中になれなかったかもしれない。
シャイで優しい祖父は、家族に病気の世話もさせず、
ありがとうも言わせず、天国に行ってしまった。
でも家族みんなが、心の中で思っている。
「ありがとう」
じいちゃん、明日も、野球がんばるな。
出典元:PHP大賞 中学・高校生部門
優秀賞受賞作「僕は金メダル」より