日曜日の夕刻、カッターシャツに手を通し、
ネクタイを結びはじめると、君はいつも泣き出した。
幼な心に、お父さんがネクタイ姿になると、
会えなくなることを知っていたんだね。
泣きじゃくる君を、駅のホームに残したまま動き出す特急有明。
1人腰かける車内はせつなかった。
本当につらかったよ。
福岡空港から羽田に飛び、
眠ることを知らない若者達で溢れている渋谷駅に降り立つのは、
だいたい11時頃。
ハチ公口に出て、喧騒の街を通り抜けながら、
意識を仕事モードに切り替えるのが、そのころの習性だった。
ある時、泣きじゃくる君の姿を見るのがつらくて、
君が寝ている間に、こっそり東京に戻ったことがあった。
後で、目を覚ました君は、お父さんをずっと探しまわり続けて
大変だった、とお母さんから聞いた。
それからは必ず「お父さん、今から東京に行くからね」
と泣きじゃくる君に伝えることにしたんだ。
でも、この期間に、お父さんは君から
最高の幸せをプレゼントしてもらったんだよ。
君はおそらく、もうすっかり忘れているに違いない>>>
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それは、ある金曜日の夜、
いつもより早い便で帰ることができたときのことだった。
君がまだ起きている時間に家に着いた私は、
大きな声で「ただいま!」と言って戸を開けた。
すると、突然帰って来たお父さんを見た君は、
まだ言葉を話せない幼子の君は、
嬉しさのあまり仔馬のかけっこみたいに、
何度も何度も飛び跳ねて喜んでくれたんだ。
あの夜、部屋いっぱいに、君の笑顔と笑い声がはじけていた。
お父さんの存在を、これほどまでに喜んでくれる君、
これほどまでに、お父さんの帰りを待っていてくれた君。
至福の瞬間とはまさしくこのことだ。
これ以上の幸せなんてないと、
心からそう思った。
本当に嬉しかった。
あれから時は流れ、君は13歳になった。
シャイで少し生意気にもなったね。
会話も減ってきた。
でも、君がこれからどんな風に成長していったとしても、
お父さんは、あの時の君を決して忘れはしないよ。
どんな時でも君を守っていくよ。
あの頃のように、いつまでも君のヒーローではいられないけれど、
君の父親として、決して恥じない生き方だけは、
これからも貫いていきたい。
参考本:「たったひとつの命だから」ワンライフプロジェクト編