不良候補の少年は、なつかれた子供から教わりました

a177
年前か、1月の朝がとても寒い時に、必ず思い出す少年がいます。

当時、私は狭心症で休職して、九州の実家で静養していた時でした。

毎朝、デッカイ黒のラブラドールレトリバー、
愛犬テツと散歩していた時に、
いつも遅刻して実家の前の中学校に通ってた、
少し不良な少年のことです。

いつの間にかテツと仲良くなり、
私ともよく言葉を交わすようになりました。

家庭環境は複雑みたいですが、
彼はよく私の部屋に遊びに来るようになったのです。

しかし、何を語るわけでもなく、
テツと部屋でよく遊んでいました。

2月、3月と時が過ぎていき、
次第にその少年は不良のボルテージが上がり、
髪も染めていきました。

ただ私の部屋ではいつも純粋な少年の目で、
テツと遊び、よく無邪気に笑っていました。

そんな時でした。

彼は急に部屋に遊びに来なくなり、
学校にも行っていないようでした。

心配していたら、突然夜中に部屋に訪ねてきて、
さよならを言いに来たと言うのです。

どうしたのか聞いても俯いたままで、
テツの頭を悲しそうに撫でて部屋を出ました。

やっと暖かな春が来たのに、
それから少年は来なくなりました。

暖かくなったら、遠くまでテツと一緒に散歩に行こうって、
約束をしていたのに、来なくなりました。

何があったのだろう…。

とても心配な気持ちで、
何故かテツも寂しそうな顔に見える毎日を過ごしていました。

半年が過ぎ、
もうすぐで1年が経とうとしている、まだ寒い時期。

いつしかその少年のことも、気にしなくなっていた頃、
寒かった夜のことです。

愛犬テツが寿命を全うし、静かに眠っていきました。

寂しさで胸が引き裂かれる思いでした。

家族同然に育ったテツ。

テツと別れることが、こんなにも悲しいものなのかと、
とても落ち込んでいました。

そんな悲しみのどん底であったと思います…、
何もしたくない、何もできない、何も考えられない。

私は、そんな悲しみの底に沈んでいました。

そんな時、1年前に来なくなったあの少年が、
急に部屋に遊びに来ました。

私は、その少年の顔を見て、
なぜこんなに明るい顔になったんだろう?

何が彼にあったんだろう?

とても興味をひかれながら、
テツが亡くなったことを告げると、
少年は笑顔から一変して、みるみる顔を曇らせました。

目に涙をいっぱいにため、頬から流れ落ちました。

私も涙がこぼれました。

テツとの別れを、私と同じように悲しんでくれる、
少年のその思いに泣いてしまったのです。

「良かったな、テツ!」

「お前のことをこんなにも思ってくれた人がいたよ」

「嬉しいな! 会いたかったよな!」

私と少年は、悲しみを共有して泣き続けました。

どれくらい時間が経ったのか、
少年がポツリポツリと語り始めました。

両親の仲が悪く、家にいたくないことから、
不良仲間とつるんで犯罪を犯し、
昔でいう少年院に入ってたようです。

ところが、半年で出られるのに、親が引き取り拒否をして、
「学園」という親と一緒に過ごせない子供たちが
生活する施設に入っていたようです。

そうだったのか…。

いろいろあったんだね…。

彼の話を聞きながら、私は帰ってきて、
その後の彼が、なぜそんなに明るい笑顔になったのか、
その疑問を聞いてみました。

多くを語る少年ではありませんが、
その話を精一杯私に話してくれました。

その話が、あまりに私に衝撃を与え、
またとてもかけがえのない、
素晴らしい人間の愛情を感じたので、
ここにご紹介したいと思います>>>

スポンサーリンク

↓Facebookからの続きは、こちらからどうぞ↓

は、半年の少年院が終わって
両親からの引き取り拒否をされ、
寂しい思いで「学園」という施設に入りました。

施設に長期は入れないらしく、
3か所目の施設に行った時のことです。

その施設には、4歳から5歳になる小さな男の子がいて、
その男の子が、少年によくなついてきたそうです。

最初はびっくりし、どうしていいか分からず、
戸惑いもありましたが、先生から言われました。

君になついているので、
お兄ちゃんみたいにお世話をしてあげなさい。

他のお兄ちゃん達にはなつかない子だから、
大事にしてあげてね、と言われたそうです。

その子供は、すごくワガママらしく、手を焼いていた時のことです。

一緒に風呂に入ると、
その子供の背中に違和感を感じました。

背中に、

何度も、何度も、何度も、何度も…

同じところに、タバコを押し当てられたような
ケロイド状のアザがたくさんあったそうです。

少年は、その子供のアザを見て、涙が出たそうです。

こんなにちっちゃいのに、
こんなにひどい目にあったのか。

どれだけ悲しかっただろう。

どれだけ痛かっただろう。

辛かったろうなぁ…。

自分が両親からされたことに比べたら、
こんなにちっちゃい子が
こんなに可哀想なふうになるまで…。

それを考えたら、涙が幾度も幾度も流れてきて、
止まらなかったそうです。

その子供がびっくりして少年に聞きました。

「どうしたのお兄ちゃん?」

「ゆうくん痛かっただろう…?」

「うんにゃー、覚えてないよ」

「痛かったかどうかも覚えてないよ」

それを聞いて少年は、さらに涙が止まらなくなったそうです。

僕だけじゃないんだ。

僕だけが、辛かったり、悲しいんじゃないんだ。

悲しいなぁ、こんなに僕の心、ちいちゃかったんだ。

それから少年は、その子供と仲良く、
毎日元気に施設で暮らしたそうです。

そして、やがてその少年が、その施設を出る時のことです。

その子供が少年から離れません。

お兄ちゃん、行かないで。

お兄ちゃん、行かないで。

泣きながらその子供が、少年にすがりつきました。

少年は、どうしていいか分からず、
ただただその子供の目を見つめて、抱きしめるだけでした。

すると先生が言ってくれました。

「お兄ちゃんは、今から頑張るために行くんだぞ。
 だから、ゆうくんの大好きなお兄ちゃんが頑張るんだから、
 ゆうくんもここで頑張らなくちゃね。
 ゆうくんがここで頑張れなかったら、
 お兄ちゃんはすごく悲しいと思うよ」

その子供は、涙をふきながら、小さい声で言いました。

「ぼくがんばる!

 お兄ちゃん、ぼくがんばる

 お兄ちゃん、ぼくがんばるから!」

小さい声が次第に力強い声になったそうです。

スポンサーリンク