「先生、ぼく、きょう生まれたんだよ」と、
ミツオ君が、うれしそうに話しかけてきました。
そこで私が、
「そう。ミツオ君も生まれたときは、
ほんとに小さかったんだろうな。
それが、お父さんやお母さんのおかげで、
こんなに大きくなったんだね。どれくらい重くなったのか、
先生が、はかってあげよう」
と言いながら、ミツオ君を抱き上げました。
ミツオ君は少し恥ずかしそうに笑っています。
それを見た子どもたちは、歓声を上げました。
そのあくる日、ミツオ君のお母さんから、
手紙をいただきました>>>
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「ミツオは毎日学校から帰ってまいりますと、よほど疲れるのか
『ただいま』という声も聞こえないくらい小さい声です。
そして座敷に上がってくるなり、ごろんと横になってしまいます。
ところが、きょうはずいぶん変わっていました。
『ただいま』という声もびっくりするような大きな声です。
そしてハアハア肩で息をしながら、私のそばに走ってきて
『お母ちゃん、ぼくね、先生にだいてもろたよ』と申します。
そしてそのあと、座敷中をポンポンとびながら
『先生にだいてもろた、先生にだいてもろた』と大はしゃぎです。
私までうれしくなってしまいました。
先生ありがとうございました」
この手紙を読んで、私自身驚きました。
何か何気なく抱き上げたことが、
ミツオ君にとっては、こんなにも嬉しいことであったとは
思いもよらなかったのです。
私は手紙を何度も読み返しながら、教室に行きました。
そして教室の中に入りました。
すると、二、三人の子どもが走ってくるなり、大きな声で、
「先生、ぼく、あさってやで。たのむよ。だいてや」
「ぼくもやで」
と言うのです。
誕生日の予告の申し込みです。
その日から私の学校では、その子どもの誕生日には、
その子どもを抱き上げることになったのです。
引用元:小さいサムライたち「PHPベストセレクション」
文:吉岡たすく(児童文化研究家)