深見千三郎という芸人さんの名前を知ってる人は、ほとんどいないと思います。
この人、ビートたけしの心酔するお師匠さんなんです。
たけしさんが明治大学を中退して、ふらふらしてるところを拾ってくれた人です。
ビートたけしという人は、稀有な才能を持つ人でもありますが、
幾多の危機を乗り越えるなど、強運の人でもあります。
逮捕されても、瀕死の事故に遭っても、
この厳しい芸能界の中心にカムバック出来る力は
「強運」のもたらすものでもありましょう。
たけしさんは、自分の強運の中でも、この師匠に出会えたことが、
最も強運だったと独白しています。
この深見千三郎さん、いったいどんな人だったのでしょうか?>>>
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めったに他人を褒めないビートたけしさん、
しかし、この深見師匠を語る時、その粋を絶賛してやまないのです。
以下、たけしさんが、敬愛する深見師匠を語る文章の引用です。
師匠の深見さんにも、ずいぶんいろんなことを教わった。
「おいタケ、鮨でも喰うか」って鮨屋に行って、オヤジさんがひとりと、若い衆が二人いれば、あの当時でひとりに祝儀を一万円渡していた。
師匠と俺の二人で握りを喰っても、一万円するかしないかの時代に、祝儀は三万円だった。
それも自分じゃ渡さない。帰りがけに俺に財布を渡して支払いをさせる。
その支払いにもタイミングがあった。
師匠が席を立つ前に渡してしまうと、鮨屋のオヤジさんは当然「師匠、ご祝儀ありがとうございました」と礼を言う。
そうすると、怒られる。
「相手にありがとうございましたと言わせるな。そういうの俺はきらいなんだ。ちゃんと俺が店を出てから払え」
これが師匠の教え。
また、俺が師匠と仲良くなって、「師匠、鮨屋行きませんか」って誘いをかけても、首を横に振ることがあった。
「行かねえよ」
「なんでですか」
「祝儀代がねえんだよ」
鮨の金がないわけじゃない。祝儀がない。
一万円はあるけど、あと三万円の持ちあわせがねえんだって言うわけだ。
それでずっとやってきた人だから、祝儀が払えなきゃ、飯を喰いに行かない人だった。 かっこよかった。
テレビで顔を売るタイプの芸人じゃなかったけれど、さすが浅草の深見だなあって、そういうことが何回もあった。
自分の一座を持ち、全国を回って興行していた人だから、もちろん堅気ではあるのだけれど、ヤクザみたいな人でもあった。
だけど、なんといえばいいのか、骨っぽいところがちゃんとあって、そしてとびきりの照れ屋だった。
端から見ても格好のいい、大人の作法を身につけている人は、だいたい照れ屋だ。