じいちゃんの鉢だけは誰も取って行くことはなかったのだが…

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いちゃんは、定年退職後バラの手入れに第二の人生を見いだした。

朝から晩まで、庭中に置いてある100株以上のバラの鉢の世話に明け暮れている。

時々品評会などにも出品し、好成績をおさめているらしい。

消毒などで近所の人たちにご迷惑をかけることもあるので、
じいちゃんはバラが咲いたら惜しげもなくあちこちに切り花として配る。

通りすがりの人がほめただけでも、
じいちゃんは花束にしてバラをプレゼントする。

近所の公民館、幼稚園、グループホームなどへも寄贈している。

病院のロビーにも欠かさず届けているので、
受付の人や先生ともなじみになっている。

じいちゃんは風邪をひいてしんどくなって近所の病院にいくと、
特別に待ち時間なしにしてもらえたと、嬉しそうに話していた。

じいちゃんのバラは大好評で、
地域をあげてじいちゃんを応援してくれる。

窃盗の多い地域だけど、
じいちゃんの鉢だけは誰も取って行くことはなかった。

今までは・・・。

じいちゃんはバラの盆栽にはじめて挑戦した。

何年目かの春、あまりにみごとに咲いたので、
地域の公民館の作品展に出品し、
○○公民館祭芸術賞を受賞して、鼻高々だった。

まるでサクラのように古風に咲くバラの花は本当に美しくて、
じいちゃんは地域の人にももっと見てもらおうと、玄関先に出しておいた。

月夜の晩には暗闇に凛として、それはそれは美しい花だった。

ある朝じいちゃんが玄関に出ると、鉢はなかった。

はじめて盗まれて、じいちゃんは呆然としていた。

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は近所の主婦が持っていたのが分かった。

その主婦の近所の人数人が、
「この花は○○さんちのじいちゃんが咲かせたものだ」
「なぜじいちゃんとつきあいのない貴女の家にあるの?」
と口々に尋ねたらしい。

主婦は泣きながら、つい魔が差して盗んだことを白状し、
近所の世話好きママに連れられてわが家まで謝りにきた。

じいちゃんは、
「その鉢はこの人にあげたものだ」と言い張り、
鉢を受け取らなかった。

付き添いのご近所ママが帰ったあと、
じいちゃんは、その主婦と長い時間話をしていた。

主婦はお金がないわけではなく、仕事と浮気に夢中で家庭を顧みない夫と、
育児疲れとでぼろぼろになっていたそうだ。

そんな時に、つい美しいバラに目を奪われてしまったと、
泣きながら告白したらしい。

じいちゃんは主婦に改めてバラの鉢をプレゼントし、
じいちゃんの庭で一緒にバラの手入れをしようと提案した。

主婦はその後気持をあらためて、じいちゃんに師事しバラの育成を学んだ。

その結果、主婦の家はご近所で有名な第二のバラ屋敷となった。

花の咲き乱れる主婦の屋敷には園芸好きの人たちが出入りするようになり、
孤独で引きこもりがちだったかつての主婦はすっかり明るくなった。

浮気ざんまいだったご主人も主婦のところに無事帰ってきた。

参考:2ちゃんねる「ちょっといい話」より

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