美味しいと言われるのが最高に幸せな、小さな食堂

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は、小さな食堂でバイトをしています。

年配の夫婦と息子さんで経営。バイトは私だけの合計4人のお店です。

基本的に調理は旦那さん(店長)と息子さんがやっているのですが、
付け合せの人参のグラッセなど簡単なものは私が作っています。

昨日最後に来た親子三人連れのお客様が、
いきなり厨房の方に声を掛けてきました。

「この人参のグラッセを作ってる人はどなた?」と聞いてきたのです。

私は反射的に、これはクレームだなと感じました。

「まずい」と苦情を言われるものだと思い、
震えながら「私です」とお客様がいるテーブルに向かいました。

お客様は、私をじろじろと見て
「そう、あなたが作ってるの…」と呟きました。

私はもう怖くて怖くて、手をぎゅっと握りしめながら、
その視線に耐えていました。

厨房の方では、料理しながらも、
店長がじっとこちらに視線を送っているのが分かります。

息子さんは、一歩踏み出して、
このテーブルに向かいそうな様子でしたが、
店長がそれを制止したようでした。

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ーブルの奥様が、
「うちの子、人参が大嫌いでどんな料理にしても絶対に食べないの」
と言いました。

「それなのに、このお店のグラッセだけは美味しいって
 いつも嬉しそうに食べるのよ。
 良かったらレシピを教えてくれないでしょうか」

そう言って、メモ帳を取り出しました。

そういうことは店長に確認を取らないといけないので、
冷静を装って厨房に向かいました。

お客様に背中を向けた私は、
実際は嬉しくてぼろぼろ涙が出ていたのです。

厨房に行くと店長が言いました。

「話は聞いてた。レシピは教えていいぞ」
とレシピのコピーをとってくれました。

そして「これも持っていけ」とグラッセと、
うちの一番の自慢のコロッケを渡してくれました。

お客さんにレシピとともに、
「これは気持ちです」と料理をテーブルに載せて差し上げました。

そうすると、子供は満面の笑みで「ありがとう!」と。

ご夫婦も「このコロッケすごく美味しくて大好きなんです」
と言いながら、美味しそうに食べてくれました。

このことが本当に嬉しくて嬉しくて、
お客さんが帰った後、思わず私は、大泣きしてしまったのです。

店長がこう言ってくれました。

料理屋は客に美味いと言われるのが最高の幸せだ。
 だから今のお前は最高に幸せなんだぞ

そう言いながら、私が泣き止むまでずっとお店にいてくれました。

お店もここに来るお客様もみんな大好きです。

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