沖縄の上空で体験した感動、機長さんありがとう

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縄本島の離島、宮古島に家族と夏のバカンス旅行に行っていた私は、
帰宅日の間際に、大型で強い勢力を持つ
台風8号の直撃を受けていました。

私たちが帰る前日から、ほとんどの飛行機の便が欠航し、
当日も、午前中の便と午後の便のほとんどが欠航の予定。

しかし、不思議なことに、
私たちが乗る午後1番の便だけは、
前日からなぜか出発予定になっていました。

キツネにつままれたような感覚で
ホテルをチェックアウトし、幸運の女神に感謝しつつ、
手荷物検査を通過し、待合室へ。

ホッとしながら、家族と出発を待っていると、
ふいに空港からのアナウンス。

「到着予定の飛行機が上空天候悪化のため、
 着陸できずにおります。
 着陸できない場合、欠航になりますので、
 予めご了承ください」

一転して、私の心は天国から地獄へ垂直落下。

同じように他のお客さんたちも、窓にへばりついて
空を見上げ、沖縄からやって来る飛行機を
祈るように待ち続けていました。

その姿はまるで、漂流して到着した無人島で、
救助の飛行機を待つ遭難者。

出発時間5分前になり、いよいよあきらめかけたその時、
窓の方から歓声が!

雲間から現れたJTA562便の白い機体が、
宮古空港に到着したその瞬間、
空港の待合室全体に、盛大な拍手が湧き起こりました。

1時間ほどの上空旋回を試みていた飛行機が、
みごと雲の隙間をぬって宮古空港に着陸したのです。

JTA562便は、30分遅れで、
無事宮古空港を離陸しました。

そして、本当のドラマは、
この後の機中で待っていたのでした>>>

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陸してしばらくした頃、緊張からの解放と
疲れでぐったりしていた乗客に向けて、
機長から機内アナウンスが始まりました。

「本日は、悪天候のため、
 出発が遅れまして、大変ご迷惑をおかけしました。
 心からお詫び申し上げます」

いつもの型通りの挨拶がすんだ後、
機長がさらに話し始めました。

「飛行機が遅れた上に、誠に個人的なお話で
 大変恐縮なのですが、実は、今回のフライトを
 担当いたしております客室乗務員のTが、
 本便を最後に退職いたします。

 Tとは、同期として入社し、
 ともに歩んできた仲間でございます。

 彼女は上司に恵まれ、仲間にも恵まれ、
 一生懸命仕事に取り組んでまいりました。

 最後の便をご一緒させていただきましたご縁に甘えて、
 皆さまにひと言ご報告させていただきます。
 ありがとうございました」

数秒の間をおいて後、
機内に小さな拍手の音が響きました。

はじめは遠慮がちな拍手が、
やがて機内全体へ広がっていきました。

前日からの不安と緊張で疲れていた乗客たちでしたが、
このアナウンスで、私と同じように多くの人が、
あることに気づいたことでしょう。

Tさんの最後のフライトを飾ってあげたいという
機長の想いが、上空を何回も旋回し、あきらめずに、
雲の隙間を抜けて着陸させたのだろうということを。

飛行機は皆の思いを乗せて、
順調な飛行で無事沖縄に到着した後、
客室乗務員のTさん本人が
普段通りの到着のアナウンスをしました。

そしてその後、最後に簡単な挨拶をされました。

「機長からお話しいただいたTでございます。
 これまでの一便一便、心を込めて搭乗させていただきました。

 本日この便をもちまして、JTAを卒業させていただきます。
 皆さまが私の客室乗務員としての最後のお客様となりました。
 本当にありがとうございました」

その挨拶の声と言葉は短いながらも、
ひと言ひと言に心からの想いがこもった、
それは素晴らしいスピーチでした。

聞いていた私は、
不意に涙があふれてきて困りました。

宮古島と沖縄を感動で結んだJTA562便の
機長とTさんに、乗客たちは思いがけない
素敵な空の旅をプレゼントしていただきました。

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