強くて優しい高校生ボクサー、松本圭祐君のこと

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本圭祐君は、ライトフライ級の高校生ボクサーです。

元ボクサーのお父さん好二さんは、圭祐君のトレーナーとして、
毎日、彼を鍛えあげています。

基礎から実践のスパーリングまでみっちり2時間、
圭祐君は自らの身体にむち打ち、汗を流しています。

この松本圭祐君のボクサーとしての素質は、
4年後の東京五輪での活躍を期待されるほど高いレベルのものです。

それでも、昨年の全国大会では、
ライトフライ級において、惜しくも優勝を逃しています。

僅差の判定負けに終わったのでした。

父、好二さんを始め周囲は、ライトフライ級から、
ランクを上げるよう勧めました。

というのも、173㎝と成長期で、身長も伸びている圭祐君にとって、
体重47キロ台から49キロ弱のライトフライ級で戦い続けるには、
減量に無理があるというのです。

ところが圭祐君は、頑として首を縦に振りません。

ここで負けたものをそのままにして逃げたくない。
ライトフライ級での借りは、このクラスで返したい、
でないと、いつまでも悔いが残る、
との強い決意を明かします。

もともと、圭祐君はそんなに心の強い少年ではありませんでした。

幼いころ、髪の毛や眉など体毛が抜ける病気にかかり、
いじめにあってきたし、劣等感にも苛まれてきました。

お父さんも、ボクシングを教えたきっかけは、
圭祐君に、何かひとつ自信の持てるものを身につけさせたい、
誰かとくらべて、強くなるとかではなく、
彼自身の中に光となるものを与えてやりたい、
そんな思いからでした。

それが大きく素質を開花させ、
身体ばかりでなく、精神面も大きく成長させたのです。

テレビで映し出される松本父子のスパーリングを見ていると、
二人の絶対的な信頼感が伝わってきます。

圭祐君は、言います。

「どんなに辛くとも最後までやり遂げたい。
 他の人より苦しんでいる分だけ、
 その時間は自分を強くしてるに違いない。
 父の顔を見ていると、そう信じられるんです」

そんな強靭な精神力に育てた父、好二さんの教育方針はこうです。

「押しつけない、与え過ぎない」
「たくましい心を育てるには、何事も子供が自分で考えながら
 取り組むことが必要だと思うんです。
 それには、親が自分の考えを押しつけず、与えすぎないことだと思います」

さて、いよいよ昨年の雪辱の日がやってきました。

ライトフライ級の全国大会です。

圭祐君は順当に勝ち上がり、
いよいよ決勝での戦いになりました。

高校生の大会では、会場内において、
選手のそばで指導できるのは、学校関係者に限ります。

父、好二さんは、遠巻きにして
圭祐君の様子を見つめることしかできません。

そんな時、圭祐君は、ふらっと会場の外に出ました。

そして、彼自身の心にも不安が兆したのでしょうか、
お父さんにも会場外に来てもらい、
ミット打ちの相手をしてもらいました。

後で聞いたら、そのミット打ちには、
圭祐君なりの理由があったようです。

その理由が素晴らしいものでした>>>

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二さんは、案外繊細なところがあります。

息子の様子をわが身以上に緊張した思いで、見つめていたのです。

決勝を前に表情はこわばり、手足が小刻みに震えていました。
いえ圭祐君ではなく、お父さんの方です。

そんなお父さんの様子は、圭祐君、十分に察していたのでした。

試合後に、圭祐君が語ったミット打ちの理由はこうでした。

ミット打ちしたら、僕の調子が万全だということが分かります。
 それを父に分かってほしかったから、やったんです

決勝戦の前の極限の時間のことです。

自分のことで頭がいっぱいのはずの高校生が、
何という心の配り方でしょうか。

お父さんの不安や緊張を解きほぐすためのミット打ちだったのです。

そして勝負はどうなったか。

一年間の雌伏の時を過ごし、
圭祐君はみごとに優勝の栄冠を勝ち取ったのです。

圭祐君の頑張りをよく知っているから、
お母さんも妹さんも、ウルウルです。

お父さんは、そこまでは何とか涙を堪えているようでした。

しかし、記者から、ミット打ちの理由を聞かされ、
そこで堰を切ったように、父、好二さん号泣でした。



2016年5月2日放送の
NHKプロフェッショナル「仕事の流儀」高校生スペシャルから
※圭祐君は2018年にボクシングの名門、東京農業大学に進学し、東京五輪でも期待される選手として活躍しています。

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