親父のゲンコツに母への愛情を感じた

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の間、俺が夕飯食い終わってから、一人でリビングに残って
ボーッとしてると、付けっ放しになってたテレビから
「ドラえもん」が流れ始めた。

母さんも夕飯を片づけてた手を止めて、
「そう言えば、声変わったんだよねぇ」とか、
「ジャイアンの顔も違うね、この顔で
『ぶん殴ってやる~』とか言われても迫力ないなぁ」
とか言いながら、何か久々に昔に帰ったような
良い雰囲気だった。

俺は普段は、一人暮らしで何の恩返しもできないけど、
何でもいいから母さんに何かしてあげたいとは思っていた。

でも何かあげたりは恥ずかしくて、何も出来ないでいた。

母のその時の言葉を聞いて、ふと良いチャンスだと思って、
ジャイアンの真似をするフリをした。

「ぶん殴ってやる~」なんて言いながら、
肩を叩いてやったんだ。
いつも肩こりで辛そうにしていたし。

中学生の頃なんか、ちょっと悪いのがカッコいいと思い、
しょっちゅう母さんを困らせてたようなヤツが、
急にそんなことをしたもんだから、母さん何だか戸惑った様子。

母さんが何か泣きそうな感じになったから、
俺ももらい泣きしそうになって、なぜか、
「今日はこれくらいにしといてやるよ!」
と捨て台詞を吐いて部屋に帰った。

10分後、書斎で仕事してたはずの親父が
俺の部屋に入ってきた。

そしていきなり殴られた。なぜだ!?>>>

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で殴られたのか分からなくてポカーンとしてる俺に、
親父は、「母さんを殴ったな」「女を泣かすなんて最低だ」
と訳のわからないことを口走った。

リビングに戻ると、泣き笑いで動けなくなっている母から、
必死で笑いをこらえながら苦しそうに、
「違うんよ、お父さん」とか「ごめんね、タケシ」
とか言われて、しばらくして
ようやく状況が飲み込めた。

どうやら肩たたきが嬉しくて、泣いてる母さんを見て、

「ぶん殴ってやる~」と「今日はこれくらいにしといてやる」だけ
聞いた父が、勘違いしたようだ。

「俺が母さんを殴る⇒母さん泣く⇒俺引き上げる」という勘違いで、
俺の部屋に全力で乗り込んで来たらしい。

「ぶん殴ってやる~」って言い方で分かってくれよ……。

後で母に笑いながらも、マジでかなり叱られて、
妙に小さくなって、俺に謝りに来た親父が何だか可笑しかった。

殴られたのは、確かに痛かったけど、
親父の母さんへの愛は十分伝わったよ。

今度は、勘違いされないように、
感謝を伝えられるようにしようと思った。

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