弟の嫁(義妹)は、その娘を連れて実家に帰った。
時には、こちらの両親に孫の顔を見せるため、
遊びに来てくれる。
ただ、時が経つにつれ、訪ねてくれる回数も減ってきた。
以前は、3ヶ月に一度だったのが、半年に一度になり、
やがて今は、1年に一度ほどになってきた。
親父もおふくろも少し不満げ、寂しげな感じだ。
だけど無理を言うことはできない。
義妹は、自分の実家にいながらも、
生活の糧を得るためには、働かなければいけないから。
ピアノを教えたり、コンビニでのパートで働いたりで、
何とか食っている状態だった。
だけど姪っ子は、明るい性格に育ってくれた。
いや、そういう素振りが身についていたのかもしれない。
できるだけ、周囲に心配させないように振舞いなさい、
それが義妹の、娘に対するしつけだったのかもしれない。
先日、俺は6年生になった姪っ子に
「おじさんとデートしよう」と誘った。
「欲しいものは何でも買ってやる。でも車とかいうのは無しだぜ」
「行きたいところに連れてってやる。でもハワイとかいうのは無しだぜ」
俺がふざけて言うと、姪っ子はケラケラと笑った。
その日は早起きして、渋谷までジブリの映画を見に行った。
それが終わったら、お昼に鯨料理を食べさせて、その足で原宿へ行った。
正直、俺は原宿なんてよく知らないんだけど、姪っ子に言った。
「なんでも買ってやるからな。欲しい服選びな」
真剣な目でお気に入りを物色する姪っ子の横顔。
なんだか、…というか当然だけど、バカな弟の面影を宿していた。
いくつかの服を、時間をかけて迷ってる
姪っ子のさまはとてもいじらしかった。
俺は姪っ子をびっくりさせたくて、
迷ってる服全部をレジに持っていった。
姪っ子は目を丸くして、キョトンとした。
はっきり言って、韓国あたりに数泊で
旅行に行けそうな合計額になったけど、
俺は涼しい顔でカードで払った。
もちろん、冬のボーナス一括払いだ。
両手一杯の紙袋を持って、
「うれしい、うれしい」と何度も繰り返す姪っ子。
俺は照れくさくって
「やっぱり気が変わった、お店に返しに行こうか」
とか言ってからかった。
だが、次の瞬間、姪っ子の言ったひと言で、
俺は照れくささなんか吹っ飛んでしまった。
多くの人が行き交う往来で、
人前かまわず涙が込み上げてきた。
そのひと言とは…>>>
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姪っ子は言った。…ポツリとひと言。
「こんなにうれしいことがたくさん一日に起きるなんて、もったいない」
もったいない、か……姪っ子があまりに明るかったから気づかなかった。
きっと色々あるんだろう。
母親が忙しくて、寂しくて、心細くて、
6年生の小さな胸の中にしまいこんで我慢していることが…。
こんな小さな少女から、まさか「もったいない」
という言葉が出てこようとは。
同じ年の女の子ならば、もっと甘えて、
もっと飽きっぽくて、もっと贅沢に慣れてるだろうに。
本当は教育上、よくないことかもしれないけど、
たまにしか会えないからな。
おじさんは、お前の父さんと同じでバカだから、
こんな愛情表現しかできないんだ。
「疲れてないか?…そうか、ようし!
これからディズニーランドに行くぞ!!」
参考:2チャンネル「掲示板」より