2015年、4月25日、鹿児島駅前電停に到着した運転士が
運転席にA4判の茶封筒が置いてあるのに気付きました。
持ち帰り、課の職員数人で中身を確認すると、
現金25万円と1枚の便箋が入っていました。
便箋には丁寧な筆致でこうありました。
「久しぶりに電車に乗った時に『かえるの傘』がないことに気づきました。
勤めから戻りました時お世話になった『かえるの傘』は
やっぱり必要と思います。買える分買ってくださると幸せです」
末尾に「万年さつまおごじょ」と署名も添えられていました。
かえるの傘とは何でしょう?
このお金は、どんな扱いになることでしょう?>>>
↓Facebookの続きは、こちらからどうぞ↓
かえるの傘とは、傘を持たない乗客が自由に使えるよう車内に置いた傘。
忘れ物の傘を有効活用しようと市電で始めた試みです。
廃止した時期もありましたが、2000年から復活しています。
冨永倍央(ますお)課長は
「万年さつまおごじょさんは通勤で利用していた時期に、
かえるの傘を使ったのだろう。久しぶりに乗車したら、
たまたま置いていなかったため、寄付を思い立ったのではないか」
と推測しています。
しかし、どのように茶封筒を置いたのでしょうか。
「ほかの乗客の目もあるだろうに」と冨永課長は首をひねります。
車両には前後に一つずつ運転席があり、
運転士は進行方向側の席を使用します。
乗客全員が降りる終点で、運転士が席を入れ替わる直前に置いたのかもしれません。
感謝の文書が次のように書かれ、5月中旬から路面電車の車内に掲示されています。
「万年さつまおごじょ様へ
梅雨時を前にあなた様のご厚意に深く感謝申し上げます。
ただ今のところ、きちんとした取扱いを経たうえで、
あなた様のご厚意をお受けしたいと考えておりますので、
今しばらくお待ちくださいませ。
本当にありがとうございました」
富永課長はこう話しています。
「職員全員が市電とその乗客に向けられた優しい心遣いに感動している。
いつかまた乗車するであろう万年さつまおごじょさんに
この気持ちを伝えたかった」
車内広告に交じって掲げられた文書は、
インターネットやツイッターなどで紹介され、
静かな話題を呼んでいます。
現金25万円は、鹿児島中央署に拾得物として届けられています。
保管期間の3カ月が過ぎたら市が譲り受け、
傘を購入し、万年さつまおごじょさんの思いに応えるといいます。
参考記事
=2015/07/25付 西日本新聞朝刊=