オマーンの震災地への救援、有事の友こそ真の友

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マーンという国があります。

アラビア半島の東南端に位置し、
サウジアラビアやアラブ首長国連合と隣接している国です。

2010年の12月、南相馬市の地元企業「落合工機」は、
オマーンからの大きな注文案件を受けていました。

オマーンの王族系企業から中東向けに、
移動式の小型浄水器24台を作ってくれとの依頼でした。

「落合工機」の斉藤社長は、最初は雲をつかむような話で、
詐欺に引っかかってはいけないと疑ってかかっていました。

しかし、話を聞くうちに、まともな案件であることが判ってきました。

むしろ日本の企業として、極めてやりがいのある仕事だと、
斉藤社長は感じてきました。

まだまだ農業インフラの整わないアフリカやアラブの、
耕作不適格地の土壌改良をし、きれいな水を提供できる仕事です。

よし、本腰を入れて取り組もうと準備を進めていました。

その矢先でした。

2011年3月11日の東日本大震災です。

落合工機は大打撃を受けました。

従業員の家は津波で流され、原発事故による屋内退避で工場は稼働停止。

斉藤社長は「会社がつぶれてしまう」と、
事業を半ば諦めかけていました。

そこに再び、オマーンの王族企業からのオファーが入りました。

なんと浄水器の具体的な正式発注です。

しかも、700台の浄水器、それに加えて14台の大型浄水器の発注。

合計26億円という願ってもない大きな契約案件でした。

この26億円もの仕事により、南相馬の20社近くの企業に仕事が回ります。

お互いに部品を調達し、技術協力をし、
南相馬の経済の歯車が回り出すのです。

斉藤社長はじめ、南相馬が元気になる話で沸いているところ、
この話にあるひとつの申し出が加えられました。

そうだろうな、と斉藤社長は思いました。

うまい話には、それに匹敵する厳しい条件がワンセットになっている、
それがビジネスの常です。

斉藤社長らは、身を固くしてその「条件」を聞きました。

その「条件」とは・・・>>>

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マーンの王族企業の申し出はこうでした。

新品の浄水器は、まず被災者のお役に立たせてください。

現地でお困りの方々に最初に使っていただき、
その後にオマーンに送り届けてください。

何ということでしょう。

有事の友こそ真の友ということでしょうか。

確かに被災地の多くでは、震災で陸の孤島になってしまい、
断水が続いている状態でした。

住民は沢の水を使って生活しているが、
飲料水としては使えなかったのです。

早々に浄水器を完成させ、沢の水をオマーンから発注された浄水器で浄化、
飲料水を、多くの住民に提供することが可能になりました。

オマーンの王族企業の支援のあり方を考えると、
たとえば、26億円を日本赤十字社を通じて寄付する、
という方法もあったはずです。

しかしそれをせず、仕事を提供する形で応援し、
できた製品で人々を救援するという方法をとりました。

これには背景があるように思います。

日本のオマーンに対するODA(政府開発援助)には大きい実績があります。

ただ、ODAには、いろんな批判がつきものです。

特に日本企業の仕事がワンセットでひもつきになった援助や、
それに絡まる政官業の癒着などです。

しかし、日本政府のオマーンに対する援助には、
合理的な理由が認められます。

オマーンという国は、ホルムズ海峡の出入口に位置しており、
海峡を通らず、原油の輸送が可能であるという利点があります。

同時に、オマーン国の安定・不安定は、
日本経済にも大きな影響を及ぼします。

お相手の安定化が先にあり、続いて自国の利点がある、という意味で、
「利他」の精神が生かされたODAだと思われます。

「利他」とまで美化せずとも「相互依存」の関係でしょうか。

おそらく、オマーンの王族企業の友情には、
このようなこれまでの日本の友情に報いる意味が込められていた、
そう思えてならないのですが、いかがでしょうか。

おっちゃんは思います。

お国とお国の間には「友情」だけが介在するほどセンチメンタルでない代わり、
経済的合理性だけが優先するわけでもない。

人と人との間柄と同様に、時には率直に言いにくいことを言うのも友情だし、
困った時に、相手のためになる方法で手を差し伸べるのも友情です。

このオマーンの事例は、
国と国との付き合い方を考えさせる好例だと思いました。

参考記事:※週刊ポスト2011年7月1日号
オマーン国の王族系企業 被災地企業に浄水器26億円分発注
http://www.news-postseven.com/archives/20110626_23780.html

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