また来年も来いや~

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た来年も来いや~」

それがおじいちゃんの口癖だった。

おじいちゃんと言っても、私の本当の祖父ではない。

5年くらい前の夏の終わり、
私たち家族は筑波山のふもとをドライブしていた。

幼い娘に梨狩りを体験させたくて梨園を探していた。

万国旗がはりめぐらされた楽しい梨園が目に止まり、そこに入った。

おじいちゃんの梨園だった。

ヨチヨチ歩きの娘は、梨にとまっていた大きなカブト虫に大騒ぎ。

おじいちゃんは、笑いながら大きな梨を何個もおまけしてくれた。

戦時中の体験談も熱く語ってくれた。

「また来年も来いや~」

おじいちゃんに会いたくて、それから毎年、梨狩りに行った。

気がつけば娘は小学生になっている。

今年も私たちは、家族で筑波山のふもとに車を走らせた。

近くに行って息が一瞬止まった。

ない!

「おじいちゃんの梨園がないよ!」

梨の木がみんな残らず切り株になっていた。

野原になってしまったその場所に車を停める。

「おじいちゃん……」

ポロポロ涙がこぼれた。

おじいちゃんは、ワシが生きてる限り梨園はやめない。

そう言ってた。だからこれは…。

「おじいちゃんが死んじゃったよ」

泣き崩れる私に夫が言った。

「たしかその先の曲がり角に自宅があるって言っていたよ。
 お線香を上げさせてもらおう」

大きな敷地に大きな母屋と離れがある立派な家。

キレイに手入れされた庭。

その庭に信じられない光景があった>>>

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「おじいちゃん!」

庭の中におじいちゃんが立っていた。

「生きてたんだ!よかった!」

私は走って行って抱きついた」

「そっか、そっか。
 梨園が無かったからワシが死んだと思ったのか。ごめんな」

「なんで大切な梨の木、切ったの?」

「先日、果樹園仲間が亡くなった。突然の脳梗塞だった。
 ワシより二つ若いのに……。
 考えさせられた。ワシが死んだら梨園はどうなる?
 家族には重荷になるかも。
 ワシが始めた梨園。幕引きもワシがしよう」

そう言ってさみしそうに、おじいちゃんは笑った。

私はおじいちゃんの手をギュッと握りしめて言った。

「来年もいいかな。おじいちゃんに会いに…」

涙目になりながら、おじいちゃんがうなずく。

「また来年も来いや~」

引用:人間っていいな! 涙がこぼれるいい話(コスモトゥーワン)
「また来年も来いや~」より

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