お年寄りにとって、僕らが普通に扱っている便利な機械や設備、
これが案外大変なんです。
お年寄りや障害者の視点で…と口で言うのはたやすいのですが、
僕らの当たり前が、お年寄りや障害者の方にとって、
大きいバリアであることがよくあります。
83歳の女性の文章です。
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長い間、家からバスに30分乗って医者通いをしている者です。
診察室は、ビルの4階です。
私はエレベーターの使い方を知らないため、
人の乗り降りするのを待って、いつも誰かと一緒でした。
折悪しく人の来なかったとき、一段ずつ歩きながら診察室まで行っていました。
三回ほどそうしたことがありました。
あまり胸が苦しいので、階段を上がるのはやめました。
誰か人の来るのを、エレベーターの前で7~8分待ちます。
待っていると、いつも若い娘さんが来るので乗せてもらっていました。
何べんも同じですから、いろんなことを話しました。
娘さんは家から単車で通っている、同じビル内の会社の事務員さんでした。
私は何の気なしにエレベーターの使い方を知らないため、
悪いと思いながら貴女様の来るのを待っていると話しました。
翌日、いつものように、その診察室に出かけたところ、
小さな驚きが待っていました>>>
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翌日私が診察室に出かけたら、
娘さんが私の来るのを待っててくださったのです。
そして、エレベーターの中で乗り降りする時のボタンの押し方を、
私が納得のいくように親切に教えて下さいました。
また翌日も待っていて下さり、私の手を持ってボタンを押させて下さいました。
そして、次の日も待っていて下さったのです。
何も言わずに、私がボタンを押すのをじっと見ていました。
4階まで上がった時、娘さんは「大丈夫、もう心配はいらない」
そう言って降りました。
私にひとつひとつ教えるために、
娘さんは三日間、家を10分早く出てくれたそうです。
今の世にこれほどまで親切にしてくださる方もいるのかと嬉しく、
娘さんに何べんも心からお礼を申しました。
10日も過ぎると、一人でエレベーターに乗っても何の心配もなく、
楽に診察室まで行くことができるようになりました。
娘さんが私の手まで持って、ボタンの押し方を親切に教えてくださったおかげです。
エレベーターに乗った時、
いつも心で娘さんに感謝しながらボタンを押して上がっております。
本当にうれしゅうございます。
年老いて人から受けた親切、ありがたくいつまでも忘れることができません。
参考本:涙が出るほどいい話
「小さな親切」運動本部
出版:河出書房新社