フリーダイビングとは、ボンベによる補助なしの素潜りのことです。
スキンダイビングが、レクレーションとして楽しむスポーツであるのに対し、
フリーダイビングは、あくまで競技として争うスポーツです。
岡本美鈴さんというアラフォーのフリーダイバーがいます。
この方は、2010年、2012年の世界選手権で金メダルを獲得した人です。
岡本さんは、三十歳でほとんどカナヅチの状態から、
この世界に飛び込みました。
この世界に飛び込むきっかけは、些細なことでした。
ある日、テレビで小笠原諸島の海に生息するイルカの特集を見ました。
この風景を生で見たいと思い、岡本さんはすぐ実行に移しました。
ところが実際にイルカを間近で見たら、もう夢中。
イルカと人が一緒に遊ぶシーンに釘づけになりました。
それから毎年小笠原に通うようになり、ある年のこと、
飛行機でたまたま隣に座った人がフリーダイビングの選手でした。
「イルカと一緒に泳げるようになりたいんです」
と話したところ、それなら、ということで
フリーダイビングを勧められました。
最初はちょっと練習を覗いてみるだけ、という軽い気持でしたが、
海外のトップレベルの選手たちのDVDを見せられ、
岡本さんは、すっかり魅了されてしまったのです。
人間ではない、別の生き物のように美しいその姿に、
私もこうなりたい、と思ったそうです。
しかし、それにしても、ほとんど泳げない三十歳の女性が、
ただイルカに魅せられたというだけで、
こんな過酷な競技にチャレンジする気になれるものでしょうか?
そこには、やはり、岡本さんが新たな行動を起こすだけの
理由があったのです>>>
↓Facebookの続きは、こちらからどうぞ↓
岡本さんの人生観を変えるような事件がありました。
1995年、22歳のОLだった岡本さんは、
通勤中に「地下鉄サリン事件」に遭遇しました。
サリンが撒かれたのは別の車両でしたが、
後からジワジワ恐怖が襲ってきて、
事件を報じるニュースも見られない状態が続きました。
さらに翌年、卵巣に腫瘍が見つかりました。
もう少し発見が遅ければ命が危なかったそうです。
岡本さんは、この二つの体験を通して思いました。
「来年も生きている保証など、どこにもない」
それなら、やりたいことは、
「いつか」ではなく「すぐ」実行しよう、
と考えるようになりました。
そんな時に、テレビでのイルカ特集が目に入ったのでした。
岡本さんは、次のように語っています。
あらためて振り返ると、本当に不思議です。
これまでの経験のどれかひとつが欠けても、
今の私はなかった。
これは偶然の重なりなのか、努力の結果なのか……。
確かに言えるのは、自分の好奇心に素直でいるように
心がけてきたということです。
二十代で経験したあの転機以来、
私は「やってみたいこと」を強く意識するようになりました。
常に心を開いてアンテナを立て、楽しいこと、
面白そうなことはないかと探してきました。
そして興味をひくものを見つけたとき、
軽い気持で一歩踏み込んでみたら、
予想以上に引き込まれて、全力を注ぐようになった、
—-その連続だった気がします。
楽しそうなことを見つけても、実行するには少し勇気がいります。
でも「おもしろそう」と思うだけでは何も変わりません。
思い切って一歩踏み出して、たくさんのことを試す中で、
自分が夢中になれるものが見つかったり、
新しい世界が開けていくのだと思います。