金魚の死から娘は何を学びとったか?

b265
一ヵ月ほど前から飼い始めた金魚が死んだ。

発見したのは、子供たちである。

死骸を水槽から新しいガーゼの上に移す。硬直している。

体はSの字にくねり、見開かれたままの眼はまだ美しく澄んでいる。

すでに外は暗い時刻だったが、外に出て、
花壇の隅に死骸を埋めた。

小さな死骸を処理する私の手先を、
普段はお調子者の長男が神妙な顔で見つめている。

四歳の娘は、目を丸くしたまま口元を引き締めていたが、たまらず
「なんでうごかないの?」と問うた。

「死んじゃったから」と、長男が怒ったように答えた。

娘は口をぱくぱくさせ、そして黙り込んだ。

いつの間に準備したのだろう、
長男が墓石の代わりにと、アイスクリームのスプーンを差し出した。

私はそっと土に差した。

私たちは静かな気持のまま布団に入った。

絵本を読み聞かせ、明かりを消した。

子供たちの眼はまだ閉じられてはいなかった。

それから数日後のことだった。

娘が「おじいちゃんに」と宛てた手紙を書いていた。

そこに書いてあることを見て、たまげた>>>

スポンサーリンク

↓Facebookの続きは、こちらからどうぞ↓

のおじいちゃんに宛てた手紙、そこには、
「しなないように。げんきでね」
と拙い字で書いてある。

死なないように?

娘はすでに保育園に行く支度を整え、
玄関の上がりかまちに腰掛け、足をぶらぶらさせていた。

その背中に、これはどういうこと?
と問いかけようとしたとき、
こちらの気配に気づいた娘がくるりと振り向いた。

そしてにっこり笑って言った。

「しなないように!おしごとがんばってね」

娘の小さな胸に、一匹の金魚の死が
どれほどの波紋を残したのか、窺い知ることはできない。

娘は今日も、出かけていく家族に向かって、
澄んだ笑顔で、
「しなないように!」
と声をかける。

死の哀しみを知ってしまった娘に、私たちは
「しにませんよ!」
と力強く答える。

「よかった」と娘は安堵した顔で、
「ゆうちゃんは、みんなにたくさん生きててほしいからね」
とつぶやくのだ。

娘の横顔がドキッとするほど大人びて見えた。

参考本:人間っていいな!涙がこぼれるいい話(コスモトゥーワン)
「しなないように、げんきでね!」より

スポンサーリンク