発見したのは、子供たちである。
死骸を水槽から新しいガーゼの上に移す。硬直している。
体はSの字にくねり、見開かれたままの眼はまだ美しく澄んでいる。
すでに外は暗い時刻だったが、外に出て、
花壇の隅に死骸を埋めた。
小さな死骸を処理する私の手先を、
普段はお調子者の長男が神妙な顔で見つめている。
四歳の娘は、目を丸くしたまま口元を引き締めていたが、たまらず
「なんでうごかないの?」と問うた。
「死んじゃったから」と、長男が怒ったように答えた。
娘は口をぱくぱくさせ、そして黙り込んだ。
いつの間に準備したのだろう、
長男が墓石の代わりにと、アイスクリームのスプーンを差し出した。
私はそっと土に差した。
私たちは静かな気持のまま布団に入った。
絵本を読み聞かせ、明かりを消した。
子供たちの眼はまだ閉じられてはいなかった。
それから数日後のことだった。
娘が「おじいちゃんに」と宛てた手紙を書いていた。
そこに書いてあることを見て、たまげた>>>
↓Facebookの続きは、こちらからどうぞ↓
娘のおじいちゃんに宛てた手紙、そこには、
「しなないように。げんきでね」
と拙い字で書いてある。
死なないように?
娘はすでに保育園に行く支度を整え、
玄関の上がりかまちに腰掛け、足をぶらぶらさせていた。
その背中に、これはどういうこと?
と問いかけようとしたとき、
こちらの気配に気づいた娘がくるりと振り向いた。
そしてにっこり笑って言った。
「しなないように!おしごとがんばってね」
娘の小さな胸に、一匹の金魚の死が
どれほどの波紋を残したのか、窺い知ることはできない。
娘は今日も、出かけていく家族に向かって、
澄んだ笑顔で、
「しなないように!」
と声をかける。
死の哀しみを知ってしまった娘に、私たちは
「しにませんよ!」
と力強く答える。
「よかった」と娘は安堵した顔で、
「ゆうちゃんは、みんなにたくさん生きててほしいからね」
とつぶやくのだ。
娘の横顔がドキッとするほど大人びて見えた。
参考本:人間っていいな!涙がこぼれるいい話(コスモトゥーワン)
「しなないように、げんきでね!」より