良い旅を! 奥様が楽しみにしていた海外旅行です

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本航空の国際線「客室乗務員(フライトアテンダント)」、
15年働いたベテランの方のお話です。

この方、経営者や政治家、プロスポーツ選手など、
これまでに多くの方と一緒のフライトをしてきたんですが、
「私は普通のサービスをしてきたので、特別、心に残ることはありません」

と言った後、しばらく間を空けて、少し涙目になりながら、
「たった1回、自分で考えて、
 良いサービスをしたかなってことがあります」
そう言って遠い目になりました。

成田発のカナダ(バンクーバー)行きのフライトの、
ビジネスクラスでの出来事です。

飛行機が上昇して行く中、
一人の中年男性が、ジーッと腕を組みながら、
不安そうな、悲しそうな、とにかく複雑な顔をして、
窓の外を眺めていました。

この客室乗務員さんは思いました。

「きっとご商売のことを考えて、不安になってらっしゃるのかしら」

それとも、
「家族を残して、単身赴任で旅立つことに寂しさを感じてらっしゃるのかしら」

思いを巡らせ、後で食事やドリンクを出すときに、
少しでも明るくなっていただきたく、
(よし、お名前で呼んで差し上げよう)
そう思い、乗客名簿を見ました。

そしたらなんと、
Mr.& Mrs(ミスター&ミセス)、
つまり、夫婦のお名前になっていたのです。

(奥様も一緒なんだ…それなら観光か何かかなぁ…
 …でも奥さんの姿が見えないなぁ)

上昇中の飛行機で、まだベルトも外してはいけない状況、

奥様、トイレに行ってらっしゃるのだろうか?
と走ってその席に向かいます。

「奥様どこに行かれたのでしょうか?」
って聞こうとした瞬間に、

彼女は声が出なくなりました>>>

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の席に向かった客室乗務員が見たもの、

それは、横の座席にシートベルトをした
黒いリボンの施された遺影だったのです。

はっ!として、

聞いてはいけないと思ったけど、
「綺麗な奥様ですね。
 如何されたのですか?」
って、聞いてしまいました。

そしたら、
「実は、結婚30周年で…
 初めて海外旅行に連れてってあげようと思っていたんです。

 しかし、
 突然1ヶ月前に脳内出血で亡くなってしまったのです。
 旅行自体をやめようと思ったんですが、
 息子達が言うんです。
 『待ち望んでいた旅行をやめると、母さんが悲しむから、
  一緒に連れて行ってあげて』と。

 さらに、
 『横の座席に知らない人が座ったら、
  お母さんがヤキモチを焼くよ』と。

 それを旅行会社の人に相談したら、
 涙を流しながら、
 『その座席は奥様の座席です。
  奥様との思い出の品でも何でも置いて下さい』って。

 それで、一番子供たちの好きだったお母さんの写真を引き伸ばし、
 額に入れて、シートベルトをして、
 飛び立った時に、
 『お前の待ち望んだ海外旅行だぞ』って語りかけたんだけど…
  返事がかえってこなくて・・・」
そんな心境だったんです。

この方に、何をして差し上げることができるのか、
客室乗務員の彼女は考えました。

機長に相談したら、
そこに奥様がいらっしゃると思って、接してください」と。

奥様の好きな赤ワインを出し、
料理も全て、温めて出し、
その飛行機内にあった全てのお花を集めて、
奥様の『遺影』の前に。

今日からどうぞ、奥様と素晴らしい旅をしてください
と、手を合わせた瞬間・・・

その男性は、声を上げて泣き出しました。

飛行機を降りる時にも、泣きはらした目をして、
「本当にありがとう」
そう言って、タラップを降りて行かれました。

その中年男性の後ろ姿を一生忘れることができないと、
彼女は語っています。

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