その日は朝からどんより曇っていて、今にも降ってきそうな空模様。
それでもどうしても出かけなければならず、急いで家を出ました。
昨夜、生後6ヶ月の双子の娘が急に熱を出し、咳もひどいので、
夜が明けるのを待って病院へ急いだのです。
一人はおんぶし、もう一人は両手で抱っこ。
左腕には、おむつやミルクや着替えを入れた大きなバッグをぶら下げ、
母親ならではの力持ちの姿です。
バスを降りて、もうあと一息というところの信号でとうとうパラパラと来ました。
私は濡れてもいいけど、赤ちゃんが濡れて肺炎にでもなったら大変です。
そこで黄信号だったけど、「えーーーいままよ」と飛び出しました。
そこにダンプカーが2台、目前に迫って急停車し「ブッブ――ッ」と大きなクラクション。
一瞬ビクッとして立ち止まり、
「すみません」と言ったけれど、聞こえるはずもありません。
さらに私が小走りで駆け抜けようとしたら、
突然、運転手さんが降りてきて、私に突進してきました。
私は「あー!やばい。どなられる。もうダメや」と思い、
身をすくめ体をこわばらせました。
こわくて目を開けていることもできません。
運転手さんの野太い声が耳元に響きました。
運転手さんはこう言ったのです>>>
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『あんた、そこの病院へ行くんか。一人抱いたるから、
こっちへ渡し。荷物はもう一人のヤツに持たせたらええ』
と、すばやく私から受け取ると、一目散に病院に向かって駆け出してくれました。
私は背中の赤ちゃん一人で身軽になったので、
彼の後を追って、病院の入り口に走りこみました。
その途端、「ザァ―――ッ」と大降りの雨。
私が「ありがとう、ありがとう」とお礼を言うと、
ニコッと笑って雨の中を走り抜け、ダンプカーに戻っていかれました。
その顔も姿も神々しくて、しばらくそこから動けませんでした。
あれから十数年経っても、私はダンプカーやトラックの運転手さんに出会うと、
自然に微笑んで、会釈して道路を渡っています。
あのとき抱いてもらった娘も高校一年生。
あのときの運転手さんの親切と笑顔は忘れられません。
娘と一緒に、他の人に親切のお返しをしなくては、といつも思っています。