私は妊娠7カ月のお腹をかかえ、パートとしてそば屋で働いていました。
お昼どきはさすがに混み合い、とても忙しく、
みんな待ち時間の長いのにイライラの様子。
私はそばをお盆にのせ、お客様へと運んでいました。
その時、そばを目の前へ置こうとしたとたん、
急に手がすべってどんぶりを落とし、
お客様(60代くらいの男性)のズボンに、
そばと汁が飛び散ってしまいました。
どんぶりも割ってしまったため、調理場へもあやまりに行かねばと思いつつ、
お客様へは「すみません、すみません」とタオルでふきながら、謝るだけ。
このお客様に何て言われるか怖い!>>>
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このお客様に何て言われるか怖い!
そう思っていた矢先、
「たまには床にもそばを食わせないとな。床も喜んで食ったべ。
おれなズボンなのさすかえない。それよりあんたの体は大丈夫だが?」
と逆に、大きな声で私をかばってくださいました。
後で思いましたが、大きな声は、店側の人間にも
「私を怒るな」と制してくれたような気がします。
またお客様側にしても、それまで全員の目が私に向けられていたのが、
スウ―ッと消えていくのがわかりました。
私のこわばっていた体もスウ―ッと、ときほぐされたように感じました。
混んでいるさなかに、しかもお腹が空いていたお客様に、
とても優しい言葉でかばっていただき、私も気持が楽になりました。
帰りには、あったかい笑顔で
「ごちそうさん!」
と言って、お店からのクリーニング代を受け取りもせず、
さっさとお帰りになりました。
言葉に消しゴムは使えない。
だから、思いやりのある優しい言葉こそが、本当の真心の親切なのだと、
教えられた思いでした。
参考本:涙が出るほどいい話
「小さな親切」運動本部(河出書房新社)
山形県 Оさんのお話しより