普段湿りがちな、入院中の子供達や看護師さん達に大歓迎を受け、
カズさんはリフティングを披露して大歓声を受けていました。
ただ、明らかにその輪に加わらないスキンヘッドの女の子がいました。
ふとした拍子に、その子の姿がカズさんの視野に入りました。
カズさんが話しかけましたが、その子は、サッカーに興味が無いと言い残し、
車椅子で病室に去って行ったのです。
看護師さんに聞くと、その子は白血病で抗ガン剤の副作用から、
髪の毛や眉毛が抜け落ちて、それから誰にも心を開かなくなったのだといいます。
しかしカズさんは見逃していませんでした。
その子が去ってゆくとき、小さな紙切れのようなものを落として行ったのです。
カズさんがその紙切れを見ると、こう書いてありました。
「試合いつもテレビで見ています。頑張ってください」
そうなんだ。きっと恥ずかしかったんだな。
カズさん、そう思いました。
そして、看護師さんに一枚の色紙を託しました。
その子へのメッセージです。
色紙にはこう書いてありました
「絶対に何があってもあきらめない」
次の試合のことです。
ピッチに立ったカズさんの姿を見て、みんながどよめきました>>>
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次の試合、チームメイトやサポーターから大爆笑や野次がおこりました。
新聞記者はこぞってこう書いたのです。
「キングご乱心」
そこにはクリクリ坊主で眉毛も剃ったキングカズの姿があったのです。
その時には誰も知らない、少女のためだけの、
カズさんによるピッチでのパフォーマンスだったのです。