おばあさんからの切ないナンパ

a122
年の夏休みの話です。

会ったこともない遠い親戚の葬式。

親父が出席するはずだったんだけど、
どうしても行けなかったので、
僕が代わりに出席することになりました。

新幹線に乗って、ある田舎町へ…。

周りも見たことない人しかいないので、
重い空気に気圧されていました。

葬式が終わり、退出しようとしたとき、
出口で見知らぬおばあさんに突然腕をつかまれました。

けれども、つかんだきり何も話さず目を丸くしているだけです。

かなりのご高齢だったので、認知症状かなと思い、
何でしょうかと質問すると、
「○○さん?○○さん?」としか言いません。

やはり認知症なのだろうと思い、
周りをみても誰も知り合いがいる様子にありません。

この人も僕と同じく遠縁の人のようです。

しばらくおばあさんのそばにいて、話を聞いてあげました。
そうすると、おばあさんに食事に連れて行かれました。

お腹も空いていたので一緒に食事をすることにしました。

食事中にも、おばあさんは昔話ばかりしていました。

食事の後も、僕はあちこちに連れ回されました。

帰りの新幹線の時間もあるので、おばあさんにそのことを言って、
別れようとすると、今度は引止めにかかられました。

もう行ってしまうのか、
今度は直ぐに帰ってくるのかと、
聞き取りにくい方言で何度も僕に聞いてきます。

いよいよ僕も面倒くさくなってきたので、
また直ぐに会えますよ、
と返事をしつつ別れることになりました。

おばあさんは駅まで一緒に行くと言い、
さらに、途中何度も行かないでくれと言われ、
しつこく引き止められたのです。

散々な葬式代理出席でした。

数日後、また親戚の葬式の連絡です。

今度は親父が、この間よりも近い親戚なので
僕にも一緒に来いと言います。

バイト仲間にまた葬式かと冷やかされて葬式に行きました。

式場に着いて驚きました。

亡くなった人は、あのおばあさんだったのです。

驚きつつも、そうか、あのおばあさん亡くなったのか、
ぐらいの思いしか湧き上がってきませんでした。

葬式の喪主は、おばあさんの弟さんが行っていて、
どうやらおばあさんは、ずっと独身の様子でした。

式後改めて喪主の弟さんに会いに行きました。

そこで、喪主である弟さんは、僕の顔を見て驚愕したのです。

どうしたことでしょう。

僕はまた○○さんと間違えられたようです>>>

スポンサーリンク

↓Facebookからの続きは、こちらからどうぞ↓

くなったおばあさんにもそう言われたことを教えると、
いつ会ったのだと聞かれ、前の葬式で会い、
食事やら散歩したことを話しました。

そうしたら弟さんが泣き出して、少し待っていてくれと言います。

しばらくして弟さんが写真を持ってきました。

その写真には僕が写っていました。

写真は白黒でかなりぼろぼろでしたが、
ゲートルを巻いて、国民服を着た僕が立っていたのです。

そして隣には十代後半に見える女性がいました。

良家のお嬢さんに見えます。

弟さんが話してくれました。

その女性はあのおばあさんで、
隣の僕そっくりな人が○○さんだということ、
戦争が終わったら結婚するはずだったこと。

終戦後その人は帰ってこなかったけれど、
おばあさんは、帰ってくると言い続けたこと。

おばあさんは戦後の農地改革で家が没落し、
結婚を薦められても頑なに拒否し続けたそうです。

おばあさんが死ぬ直前に、弟さんに対し、
やっとあの人が帰ってきてくれた、
今度は直ぐ戻って来るんだと嬉しそうに語っていたとのことです。

弟さんは、死の直前に幻覚を見ているのだろうと思ったそうです。

だけど、そうじゃなかった、
あの人の生まれ変わりが最後に会いに来てくれたんだ、
と号泣しながら語り、僕に何度もありがとう、ありがとうと言いました。

僕も涙が止まらなくなりました。

おばあさん、今頃僕のそっくりさんと、天国で寄り添っているのだろうか。

またいつか、お墓に花を添えて会いに行きますからね。

スポンサーリンク