大学を卒業し、就職が決まり、
一人暮らしのアパートを引っ越すことになった。
友人数人が手伝いに来てくれた。
それに、電車で1時間半くらい離れた実家から、
姉も手伝いに来てくれた。
姉はなぜかデカい荷物を持ってきた。
「何だろ?変だな」と思いつつ、作業を開始した。
昼飯時になったが、コンビニや食べ物屋に行くのも
大変な田舎のこと。
僕は見栄を張って、
仕出し屋に寿司の出前を頼んでおいた。
そのお昼の食事は、友人らには大好評。
なんとか、おかげで夕方前には引っ越しが終了した。
新しい住まいだ。
ひとまず落ち着いて、友人らも帰って行った。
姉も最後まで残り、後片付けをした後
帰ろうとしていた。
そうだ、忘れていた。
例のデカい荷物を持ったまま、
姉は帰ろうとした。
「あれ?そんなデカい荷物を持って帰るの?
引っ越し祝いか何かじゃなかったのかい?」
聞いても、姉は言葉を濁すだけだった。
じれったくなって、無理やり荷物を奪い、
中身を見てみた。
そうしたら、そこには…>>>
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荷物の中身は、大量のおにぎりだった。
「引っ越しで台所も片づけてるし、
みんなお昼に食べるものが無いだろうと
思ったんだけど…。
すごいお寿司とか出てきたから、
出しにくくなっちゃった」
恥ずかしそうに苦笑する姉。
僕は泣きそうになった。
あんな重そうな荷物を、わざわざ1時間半もかけて、
電車に揺られて持ってきてくれた姉。
もちろん、その後、おにぎりは全部引き取って、
ラップにくるんで冷凍保存し、
一週間かけて全部食べた。
コンビニのおにぎりも嫌いじゃない。
だけど、その何倍もうまいおにぎりが
すぐそばにあったことに気づかされた。