大人のプライドより、子供に思い出を残してあげる方がいい

a892
がまだ十代のころのことです。

サーカスの入場券を買うために、
父と私は長い列に並んで順番を待っていました。

ようやく、私たちの前にいるのは、
あと一家族だけになりました。

私は、その家族に強く心を引かれました。

その家族には子供が8人もいて、
一番年上の子供でも12歳くらいにしか見えません。

あまり裕福そうではなく、着ている服も上等とはいえませんが、
きれいに洗濯されています。

そして、行儀よく手をつないで、
両親の後ろにきちんと二列に並んでいました。

期待に胸はずませた子供たちは、
ピエロのこと、象のこと、
そして、今から見るいろいろな演技のことを、
嬉しそうに話していました。

どうやら、サーカスを見るのは、
これが初めてのようです。

子供たちにとって、今日のサーカスは、
生涯残る素晴らしい思い出となることでしょう。

子供たちの前には、両親がとても誇らしげに立っていました。

妻は夫の手をしっかりと握って夫を見上げ、
夫も暖かい微笑みを浮かべて、
妻を見つめ返していました。

売場の女性が、入場券の枚数をたずねました。

父は胸を張って答えます。

「子供8枚と大人2枚ください。
 これで家族にサーカスを見せてやれますよ」

入場券の合計金額が告げられました。

すると、妻は夫の手を離し、
黙ってうつむいてしまいました。

夫の唇も震えています。

彼はまた聞き返しました。

「いくらですって?」

売場の女性は、もう一度答えました。

その父親には、それだけのお金がなかったのです。

サーカスを見るにはお金が足りないということを、
後ろにいる8人の子供たちに、
どうやって告げようというのでしょう。

父親が立ちすくみ、
いまや子供たちに何かを話しかけようとしていた時です。

私の父が動きました>>>

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との成行きを見ていた私の父は、
ズボンのポケットに手を入れました。

そして、20ドル札を取り出し、
なにげなく落としました。

父は腰をかがめて、そのお札を拾い上げ、
その前の男の肩を軽くたたいて、こう言いました。

「失礼ですが、ポケットからこれが落ちましたよ」

その男は、私の父が何をしようとしているのか、
すぐに察したようです。

彼は人から施しを受けるような人ではなかったかもしれません。

でも、その時は、私の父の助けを、
心から感謝して受け取ったのです。

20ドル札を差し出す父の手を両手でかたく握りしめ、
その目をじっと見つめました。

唇は震え、目には涙をうっすらと涙をうかべています。

「ありがとう、
 ありがとうございます。
 これで助かります」

父と私は車に戻ると、そのまま家に帰りました。

その晩、私たちは、サーカスを見ることはできませんでした。

でも、それでよかったのです。

サーカスもいいですが、父の人間としての振る舞いに触れることができた、
そのことはさらによかったのです。

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