親は大人同士で話をしていて、気づいてくれなかった。
胸くらいの深さのところを歩いていたら、
急に深くなって(2メートルくらいだと思う)、
突然沈んでしまって、あとはもがいてもがいて…。
たくさん水を飲んでしまって、頭の遥か上の方に水面が見えて、
苦しくて「もう死ぬんだな」と子供心に思った。
その時、身体を掴まれて水から引きずり出された。
知らないおじさんが助けてくれたのだ。
足のつく深さまで来たら、おじさんが言った。
命を救われた僕は、おじさんのその言葉で、
その後の人生まで救われたのではないか…。
そんなふうに思えるのだ>>>
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おじさんが言った。
「砂浜まで連れてってやることも出来るけど、
それだとあんたは一生、海が怖くなるから、
手を持っててやる。
バタ足して自分で帰れ」
苦しかったけど、おじさんに手を引かれて
自力でバタ足で浜辺まで辿り着いた。
見たら、もうおじさんはどこにもいなかった。
あの時のおじさん、ありがとう。
おかげで、海も水も怖くならなくて済んだよ。
中学校では水泳部に入ったよ。
大して泳ぐのは早くなかったけど、
泳ぐのが大好きになったよ。