仕事がつまらなくてつまらなくて、
心身共に疲れて、それでも仕事は追いかけてくる。
その日も12時頃の電車に乗った。
箱の中は、全体に酒臭い。
いつもの風景だ。
扉にもたれた50歳くらいの、やはり酒臭い男がいた。
一人でモゴモゴと愚痴を言っていた。
当然、周りの人は寄り付かなかった。
俺は少し気にしながらも、
おっさんと同じ側の扉に立った。
心の中で「こいつ絡んでこないだろうな」
なんて思いながら。
幾つか駅が過ぎて、今度はこちら側の扉が開く番。
「扉が開いたら、このおっさん、ぶっ倒れるかも。あぶねえな」
って、そう思った瞬間、手が出ていた。
手を出した俺に、おっさんが何か言った>>>
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「にいちゃん、優しいな。ありがとう。俺のこと心配してくれて。
あんたみたいな人もいるんだよな」
そう言って、おっさんは微笑んだ。
その目は迷子が、親を見つけた時の子供のようだった。
『おっちゃん、なんか嫌なことがあったのか?
誰かに意地悪されたのか?がんばれおっちゃん!』
口に出しては言えなかったけど、心の中でそうつぶやいた。
自分の心の中のつぶやきに、実は自分で「ハッ」と気づかされた。
なんだ。それは俺が、やはり誰かに言って欲しかった言葉じゃないか!
見た目は、皆いろいろ違いがあるけど、
案外、中身はみんな同じようなところがある。
おっさんも俺も同じなんだ。
それから以降、出来るだけ『いい言葉』を
胸に閉じ込めないようにした。
そうしたら、ほんの少しずつだけど、冒頭述べたような、
「つまらなくて、つまらなくて」というわだかまりが、
溶けかかってきた感がある。